爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第7章 山口 最期の日
杉県令の死を宇喜多へ通告してから一時間が過ぎた。諸々の手配は大尉に任せたが、弔問代わりの悔やみの文章は首相自らが書き、文言を周辺と検討して決めた。
当たり障りのない、一方で預かり知らぬ事に動揺をしているかのように―実際動揺はしていたのだが―味を付けた内容を福原へ打電したが、すぐに返って来た反応は酷くあっさりしたものだった。
連絡に対しての事実関係の確認である。
杉の死に至る経緯も踏まえての回答を求めて来た訳(わけ)だが、念のため正直に書いた。信用されるとは思っちゃいない首相だが、せめてもの誠意を示そうとはした。
これを俗に「自己満足」と言うのを、当人は良く分かっている。しかし好き好んで悪役を仰せ付かる者は早々居ない。悪足掻きではあるがせめてもの抵抗はしたいのである。
悪意あるいは強欲に従うのでないなら、その者はやはりどこかで良心の逃げ場を作らねばならない。吉野菫を時に野心家として強欲の徒と見る向きもあるが、彼女の本質は別の所にある。彼女の大衆向けのアピールは時にデマゴーグに類されるが、民権尊重・弱者保護の姿勢は、何ら嘘のない彼女の信念である。
何物も得難い程、苦しい人生を送って来た。得たモノ以上に喪って来た。それ故に与える者と成った。
県令に対しての饗応も古典的な振る舞いではあるが、しかし与えるという点においては、紛れもない彼女の意志に沿ったものだ。その意志の前で唐突に機会を奪われ、誠意を汚された屈辱は如何ばかりか。しかし幾ら憤っても疑われるのは唯一人を於いて他になく、今はただひたすらに低姿勢にして様子を伺うしかない。
よもや敵の顔を伺うとは。
思わず内心を顕(あらわ)した形相を引っさげ、屈辱で身を震わせたくなった。
そんな心持ちの中一時間が過ぎたが、宇喜多側は改めて送られた速報に対し未だ反応がなかった。
長周県令の執務室に居る首相は、老いた政庁の内装と、僅かに脚を動かすだけで軋(きし)む床の音さえ気に障った。分かっていてもジリジリとした感傷が不快を催す。
執務机の向こうへ目をやった。煙草を燻(くゆ)らせつつスケジュール帳を両手で弄(もてあそ)ぶ大尉は、何事かを思案しているようだった。
「何かあるの?」
「……」