爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第7章 山口 最期の日
語気が強い。兵は中途半端になっていた。権力者の剣幕に押され、兵はたじろいで口籠もっている。命じられた身の上は誰彼からも主格にされて、結局損のし通しとなる。兵は嫌というほど知っていて、後々の災いを懸念するあまり、問いに答える事さえままならない。
「誰が言った!? 何を命じた!?」
「こ、これは」
尖った問いが胸に刺さり、答えを躊躇わす。首相は尚(なお)も捲(まく)し立てて兵を困らせ、動揺させた。今、足下の杉県令は如何に思うであろうか?
青筋立てた剣幕を見受けて、副官の蓮池夏希は俄(にわか)に急ぎ足でやって来た。
「ああ、それは私です。私ですから」
間に割り込み、蓮池大尉は布持ちの躊躇い人の肩を2回叩いた。兵は吉野首相の眼を見ず会釈して腰を屈めた。半端な立ち位置で難儀した担架も、それに併せてしゃがみ込んだ。
後背に動きを感じる。大尉は剣幕と対した。
「何時までもこうしちゃおれんでしょう?」
「一体どうなっているのよ!?」
噛み合うはずもないが、首相は想像の内にある。大尉は現在の状況を把握した。
「誰の手かは分かりにくい。今は一つずつ虱潰すしかない。それに杉の死に化粧や回答もいるでしょう」
「どう言えって?」
「考えるしかないでしょ? いいから取り敢えず落ち着いて」
蓮池大尉は杉県令から吉野首相を押し離した。二三歩後退すると首相は大尉の腕を払った。
「落ち着くって何よ、無礼者!」
「嗚呼、こいつは失敬。だがいい加減にしなね、兵が騒ぐ」
蓮池大尉は僅かに眼へと力を込めて吉野首相に投げた。首相はそれを迎え撃っている。
会場に運ばれ、敗将を持て成すはずだった彩り華やかな料理は、もうすっかり冷めて、加えて誰も近寄らない。皆が疑っているのだ。誰か定まらないが、きっと誰かを。県令が倒れてから各々が、頭に錯綜する情報をまとめかねていた。顔に出てしまっているのだ、分からないまま。
「私は」
一時の間が空き、首相が口を開いた。直後に溜め息をつき、眼を強く瞑り、同時に眉間へ皺を寄せた。
大尉は特に何も思わなかった。
首相は一頻(ひとしき)り顔を険しくしながら
「…落ち着いてる。落ち着いてるわよ」
と続けた。
「…大丈夫ね?」
「二度まで聞くな。そう言ったよね」