爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第7章 山口 最期の日
もはや拭い切る事は叶うまい。吉野菫は、眼の前に倒れた杉良運(すぎ よしつら)の変色した顔を見てそう思った。
大島口・小倉口の戦いを制し、馬関海峡での海上決戦に勝って防長へ上陸した九州軍は、アメリカ軍の航空支援を受けて勢い付き、一週間で征服を完了した。十三宮教会から、和平の斡旋を託されて送られて来た須崎優和が、河内三好党から派遣された、八洲一門の「四方之魔」とされる男と、東京側の誘引に乗じた八洲余一(やしま よいち)の襲撃を立て続けに受け、行方不明となっている間、蓮池夏希達の奸計で侵攻が開始されたため、九州軍はある程度の不意を突く事ができ、優勢な軍事力を遺憾なく活かせた。山口市の庁舎に籠もって抵抗を繰り返していた県令の杉は、山口市を灰燼に帰さんとさえした陸軍強硬派の司令官達を押さえ込んだ吉野菫と、復帰した須崎優和の説得を受け、降伏開城を全世界へ通知した。吉野首相は、敵の健闘を讃える形で開城させるべく山口市に乗り込み、杉県令と会談会食を催したが、食前の酒杯を傾けた途端に苦悶し倒れ落ち、挙げ句死んだのである。
今、吉野首相は杉県令の前に立ち尽くしている。最早どうにも言い繕う自信はない。会食場所も、献立も、県令の好む赤のワインも調べ上げてまで支度をし、彼に献じたのは他ならぬ吉野達九州側のスタッフである。県令は僅かな世話役と、秘書 宇都宮勇人(うつのみや はやと)を携えているのみだった。宇都宮秘書は会食に同席して県令の最期を看取ったが、死の時に狼狽し怒り狂って首相に掴み掛かり、危うく引き剥がされて世話役達と別室に拘禁されている。
誰が仕掛けた。吉野菫は酷く怒っていた。いつ誰が頼んだと言うのか。こんな顛末を望む者が居るだろうか!?
煮え滾(たぎ)る怒りのために毛の先まで熱を帯び、見通しを奪われたために吐き出したくなる程の悪感を得た。
会見場所にあった兵が三人、杉県令の骸へと近付いた。一人の手には白い広幅の布が握られており、後には担架が続く。取り敢えず遺骸を運び出そうとしているのは分かった。誰が命じたかは知らない。少なくとも私はしてない。吉野菫は尖っていた。
「誰が言った?」