爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第6章 渦 ―船上―
「羽床航海士はいたく機嫌が悪かったようだ」
「御客人に近寄り過ぎたんだ。自分も状況の一部だと勘違いしたんだよ」
船長 寒川修(さむかわ おさむ)はそう言うと、革張りの大きな背もたれに体重をかけて、デスクから右手前にパイプ椅子を広げて座る大柄の男に笑いかけた。その顔には少し、嘲(あざけ)りがあった。
「彼女達は可愛らしいが、戦争の仲裁人だ。あんた達同様、俺達には遠い遠い存在だよ。今更だが、気付いて良かったさ、羽床も」
「難儀な事だな。青年とは誇大な事を思う。所詮はただの取次だと言うのに」
パイプ椅子の男は腕を組み、脚を組んでいる。髪は剃り上げられて整うが、眉毛は手も入らず太く伸びきっている。肌の色は浅黒く、乗船士官用の白い服とはよく対を為していた。そして袖から露わになった腕は実に太く、力瘤(ちからこぶ)が明らかに盛り上がっていた。
「小難しい話を聞いたり、取り次いだりすると、若い男はすぐ有頂天になる。性のようなもんかな。なにせ、こういうのはみんなが一度は夢想する浪漫に近いんだ。結局は後悔するんだがね。ああ、関わらなければよかったってさ。今度は死なずに済んだ。こっちはそう思うがね」
「俺にはわからん。小僧の浪漫など理解が出来ん」
男の言葉に寒川は苦笑した。
「胡乱(うろん)無きようにあるべし、ってか。古風で節度のあるお話しだ。だが、あんたが言うとどうしてそう尊大な感じがするんだろうね」
「さあな。俺はそう感じた事が無い。他人の感覚など知らん」
「そうかね」
寒川はこの男の傲慢な口振りを愉快そうに聞いていた。男は少し、睨むように船長へ目を遣った。
「何がおかしい?」
「睨まんでおくれよ。あんた、やっぱり怖いね」
そう言うと、寒川はもたれた椅子ごと身体をデスクから離し、そうして立ち上がった。中年の腹の出た男は後ろに手を回して組み、先ほどもたれ掛かっていた先の壁にある地図を眺めた。
「あんたを見ていると不思議な感じがするんだ」
「どんな感覚だ?」
「そうだねえ」
男の語気には荒さがある。寒川はその受け方に慣れていた。
「大昔にみんなが無くした、荒々しい存在がそこにいる感じだ。そして、手放しで憧れるには末恐ろしいものだ」
「抽象的な事ばかり言うな」
「まあ、怒らんでくれ」