爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第6章 渦 ―船上―
「船内ね……赤十字が黒ければね」
「黒十字ですか?」
「はい?」
須崎も羽床も思わず耳を疑った。
「花蓮? 熱でもあるの?」
須崎はおかしな事を口走った花蓮に怪訝な顔をしたが、花蓮は主の言わんとしている事をわかっていないようだった。須崎は軽く溜め息をついて花蓮を無視する事にした。すると腑に落ちないと言うような顔をしていた羽床が須崎へ述べた。
「仮にも赤十字がそこまでやりますか? 名を汚してまで……」
須崎は拍子抜けた顔で羽床の顔を見つめた。
「な、何です?」
「あなた……意外と間抜けねぇ」
「な……」
須崎の凝視に戸惑う顔をしていた羽床は彼女の言葉に僅かだが顔を歪めた。須崎は羽床の様子を見ても調子を変えず続けた。
「あのね、羽床君? 赤十字が黒いどうのって私は言ったけど、赤十字という組織がどうのって言った覚え無いよ」
「……どういう事です?」
羽床の声に少し陰が差している。だが須崎は、そして花蓮も何ら変わりなかった。
「医者やナースのカッコってさ、その職業の人しか出来ない?」
「……ああ」
羽床は半端な相槌をしつつ、しかし引っ掛かりが残っているようだった。
「それと、仕事が内面まで人を強いれるのかな」
羽床はそこで確かな引っかかりを感じた。
「しかし、それでは皆を疑わなければならないのでは? この船とて」
「勿論。誰彼まんべんなく疑うわね」
「な…」
羽床は言い切られて何も言えなくなった。そして少なからず憤りが生じた。仮にも、この女達を乗船させているのは船側の善意でもある。こうして航海士を取次にしているのも同じだ。それを疑う?あまつさえ公言するとは。それは舐めきっていると言うのと違いはない。
商船の船乗りにもプライドがある。そして働きもせずに寛(くつろ)ぎながら船員達を愚弄している女共を認める事などできはしない。羽床はそう憤ってこめかみに脈打つ感覚を得始めた。
須崎はそれに気付いたようで、少し目を逸らして続けた。
「船に乗せてもらっている立場でおこがましいし、仮にも隣人愛を謳う立場が誰彼構わず疑うなんて言うのはダメなんだろうけどさ。しかしそればかりはどうしようもないわ」
羽床は黙って聞いている。相槌も打たないでいた。