爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第6章 渦 ―船上―
須崎は少し詰るような口調をした。困った羽床はチラッと花蓮を見たが、すぐに無駄だと悟った。
もっとも須崎自身最近ネットサーフィングをして知ったのだが、聞かされた二人は知る由もない。
「奴さんのセルビアへの思い入れは深いのね。しかし、セルビアなら正教でしょう? 目の敵にされる言われは」
「クロアチア人はカトリックですよ、司祭様」
不意に横の花蓮から声が掛かった。言われてみればそうだった。須崎はああ、そうだっけと相槌を打った。
「まあ、ウチは」
「同類或いは異端扱いかと」
「…ですよね」
花蓮の容赦ない一言に司祭たる身も肩を落とさざるを得ない。
「まあ、そんな奴はパッパッとやっつけてくれるでしょ、航海士が」
「無理です」
「おいおい、男が無理なんて言うもんじゃないぜ!!」
須崎はからかい半分に焚き付けるが、羽床は顔の前で手を振った。
「自分、船乗りですから」
「全然格好良くないからね、それ」
わざとらしく嘆息し不甲斐ない答えに失望してみせた須崎だが、二言目にはまあいいや、と流し
「で、もう一匹のワンちゃんはどこの誰?」
と先を促した。
羽床は咳払いをして区切りをつけ、改めて背を糺(ただ)した。
「もう一人はイブン・マスード(Ibn Massoud)という者です。元ヨルダン陸軍の将校で、中東戦争やリビア・西アフリカ(チャド)の戦争、ソマリランド内戦等に参戦している傭兵隊長です」
「また傭兵ですか」
僅かに花蓮が舌打つように呻いたのを須崎は聞いた。そして須崎の口元が少し綻んだのを羽床は見た。
「今度はムスリムなのね」
「はい。聞く所によれば過激派に連なるとも」
「あれかしら、宇喜多クンは私を誘い込んで石でもぶつけようって魂胆? ああ、ダメねこりゃ。取り舵ー! 回頭ー! よーそろー!」
「司祭様? 暫しお待ちを!?」
「待ってられますかいないな、あんさん!? 命狙われてんねんで!! アカンわぁ、堪忍してぇなぁ」
「司祭様、訛ってます」
「家所さん、ソコじゃない!!」
ギャーギャー騒ぐ司祭とツッコむ所かボケに回る護衛役。この連中への引き継ぎを後悔したのは実のところ初めてではない羽床航海士である。