爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第6章 渦 ―船上―
「聞きましょう、花蓮。羽床航海士、お願いします」
花蓮越しに須崎の指図が聞こえ、航海士 羽床一督(はゆか かずよし)は軽く咳払いをした。
「松山の赤十字より、お二方の受入と神戸への護送準備整ったとの事です」
「了解、ご苦労さま。他にはある?」
「もう一点あります」
「お願い」
「……」
羽床は護衛役に視線を合わせた。花蓮は姿勢を改めない。
「花蓮、大丈夫よ。続けて貰って」
須崎は座ったまま腕を回して花蓮の腰辺りをつついた。すると花蓮は体を須崎の左手に移って眼で羽床に促した。
羽床は須崎の右手に素早く移り、身を屈めた。
「松山の赤十字には浮田郷家様の手の者が控えております。その際にはくれぐれも十三宮教会のお立場が悟られぬよう司祭様からもお気をつけ頂きますよう、三沢殿から言い含められております」
「…そこまでやって護送じゃないのかしら」
須崎はそう言い切ると僅か睨むように眼を羽床へ向けた。羽床は一呼吸置いて改めて述べた。
「実を申しますと、神戸に入られた後お二方には宇喜多様と行動を共にして頂きたく事になっております」
「構わないわよ、でも何故?」
「この度の陣には多く傭兵を招いております。その内、勢威あってそれぞれの傭兵達を心服させている者は共にお二方に敵意を向ける危険性があります」
「何でそんなの呼びつけたのよ、彼は」
「狙いは定かならざる所でありますが、単に言えば歴戦の傭兵隊長故で御座いましょう」
「ただのごろつき風情が……。奴奴さんの名は? まさか、名前がYから始まるのとか、Kから始まるのとか、Tから始まるのとか勘弁してね。帰るからね、ソイツら居たら。それから、ほあー、とかもアウト。渡り雁(かり)なんて最低」
「はあ……」
羽床は須崎の指し示している相手のどれにも思い当たる節がなく、気の抜けた返事しかできなかった。
「司祭様」
「何、花蓮? 御手洗?」
「ホアー(Hoare)は流石に無理かと思います。もう、90歳でヒイヒイ抜かしてるジジイです」
須崎は目を瞬(しばた)いた。羽床も呆けた面を晒している。花蓮はその顔を見て、咳払いをして続けた。
「いえ、言い直します。よぼよぼの、おじいさんです」
言い直された報告に、聞かされた二人は思わず目を合わせた。
「……花蓮、彼に恨みでもある?」