爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第6章 渦 ―船上―
司祭たる自分に諫言を申し立てる護衛役の律儀さには正直頭が下がるが、鬱陶しい。須崎はこの余裕のない相手に呆れていた。身なりからして今時こうまで凛々しく着こなす者は珍しいビジネスウェアであり、その真面目さと遊びのなさに須崎は彼女を推薦した十三宮聖(とさみや ひじり)の意図を察したものである。加えて護衛役は凛々しく精強ながらも女であり、齢にして司祭に及ばぬのである。
「どうしてそうカツカツするかな、ミス・サージェント? 少しくらい気抜けば良いじゃないの」
「役に背いて安楽に没するのは、七罪にして」
「ああ、もういいですよっ、全く」
護衛役の清く正しい高説を手で払い、須崎優和は持ち込んだ腰掛けに尻を降ろした。護衛役は遮られた事にも憤りすらなく、無表情で腰掛けの左斜め後ろに直立している。
内海の沖合は波高く、しぶく様子は二人の視界にも入っている。鳴門(なると)の渦潮を見ても、この護衛役は感傷もなさそうで、潮の光景が視界から出て行くのを黙って過ごしていた。仕える主人が潮の目に些か物思いしていた事など気にする素振りもなく、気付いていたかも疑わしい。
時折、教会の熱心な信徒は日共の若き理論家達の在りし日に重なって仕方がない。須崎はこのところ特にそう思えて来た。
「ねぇ」
「はい、司祭様」
「貴方、生きてて楽しい?」
「いえ、全く」
「……即答ですか」
戯れに対し、随分な答えを突き返して来た護衛役に須崎は呆れ以上の感想を得た。
「司祭様、ご質問の意図が分かりません」
「興味本位よ、別儀は無い」
「そうですか。わかりました」
会話がまた途切れた。須崎は聞こえぬぐらいの溜息をついた。