爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第5章 悪意 中國山地
男の故国の同胞や人道団体を騙(かた)って収奪した多くの難民の子やストリートチルドレンを喰い尽くし、今も犠牲者を生もうとしているこの女、そして男の雇い主。男はそれでも、漠然とした決意から彼らの手を取った。その挙句のこの外道はわかっていたはずである。
「そういや、先生は今日来ないのね」
女は額の汗を白衣の裾で拭った。女はこの国の多湿な環境と季節を愛してもいたが、同時に難儀もしていた。
「ああ、定期考査だそうだ」
「懐かしいなあ。私テスト嫌いでさあ。特にロシア語。ホント、喰わされてる気分」
「口が過ぎるぞ。ここのスタッフにはロシア人だっている」
女は少し笑みを浮かべた。
「あは。そうでした、そうでした。でも、貴方はロマンス系なんだよね」
「東ローマ(Romania)は一応そうだと言う。ホントかどうかは知らない」
「ふーん。しかし、貴方の国も難儀よね。今更になってコミュニストの方がマシとか言っちゃうんだもの」
「ナチスとコミュニストは違う。所詮関わりあるのは国民だけだからな」
「それもそうか。スラブの連中にとっては死活問題だものね、総統閣下(Der Fuhrer)は」
「こうしてお前のような奴も生まれてくるわけだしな、アーニャ オレゴヴナ」
アーニャ オレゴヴナ ブブノワ(Anja Olegovna Bubnova)は溜息をついた後、男に向かって少し微笑んで言った。
「アンナ リッツマン(Anna Litzmann)よ、イオン マリカ(Ion Marica)。いえ、〈ルーク(Rook)〉?」
目がまるで笑っていないその笑顔は、男の背を少し冷やした。
「承知しているよ、ミス〈ビショップ(Bishop)〉。ミュラー(Muller)財団記念研究所の主席研究員殿」
「なによ、その説明臭い言い方」
「確認がてらの話だ。間違っているか?」
「……別に。抜けているけど」
「何がだ?」
アーニャは手を止めて、体ごと向き直って述べた。
「若き髑髏部隊(Jung-Totenkopfverbande)、その指導者(Reichsfuhrer-J-TV)よ」
ああ、そうだった。男はそうぼやいた。