第2章 お菓子の魔女の正体は。
ログアウトしました、と無機質な音声が響く。
名無しが目を開きログインスペースから出ると、壊れた機材の破片が飛び散った店内が目に入った。
「…片付けに骨が折れそうだなぁ…」
「店より自分の心配をしろ」
後ろから声がかかり、振り向けばPlaymakerもとい遊作がいた。
「(あ、やっぱり遊作だったんだ)」
「…大丈夫なのか?効果ダメージが結構入ってたが、フラッシュバックとか、フラつきとか…」
「うん?特なんとも…」
『Playmaker様より頑丈に出来てんだナ』
「黙れ」
「まぁまぁ、そこでピリピリしないでよ…僕が困るんだよ。それより」
外のざわつきが大きくなってきた。SOLテクノロジー社だか警察だかが来たのかもしれない。
「ここにいると色々聞かれて面倒だよ。
今日のデュエル参加者は順番で呼ぶ為に名簿に名前書いてもらってるから、遊作がここにいると不自然だし。
どうやって入ったかは知らないけど…多分、正規参加じゃないでしょ?」
「ああ、店内外の混乱と人混みに紛れて店に入ったしログインした」
「無茶するなぁ…あっ、もしや助けに来てくれたのかな?ゴメンね、無駄足踏ませちゃった」
「ハノイが現れたのなら、お前がいてもいなくても来てた」
「そっか。」
そう答えると名無しは店の奥に入り、手招きする。どうやら店員が出入りする裏口があるらしい。
「取り敢えず遊作は今日ここにはいなかった事で。
私もハノイの騎士とはデュエルしてないし、隠れてやり過ごしたって言おうかな。デュエルしたとか言ったら絶対取り調べ長くなるよねー…」
「…」
遊作の表情が浮かないのが目に付いたのか、『勿論、お互いの正体は他言無用ね。まぁ、僕はバレてもあんまり問題ないけど』と冗談めかしながら笑う。
「言いたい事は色々あると思うけど、今日は許してね。…じゃあまた学校で!」
「…、分かった」
ひらりと手のひらを名無しが挙げた後、間も無くガチャン。と裏口が閉まる音がした。