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【WJ】短編 -2-

第10章 【甘】ヒーロー失格/切島鋭児郎


《 余談 》


 ヒーロー基礎学の救援授業でクラスメイトである逢崎遥香を咄嗟に瓦礫から庇った事を同じくクラスメイトである麗日と蛙吹に褒められた切島は、何とも言えない表情を浮かべていた。モニタールームでの講評を終え、更衣室にてコスチュームから制服へと着替えている最中、ふと切島は先程の出来事を思い出した。
 自身の腕の中に収まる小さな体。普段はあまり意識しないようにしていたが、あの時ばかりは逢崎を異性として意識しざるを得なかった。鼻先が触れ合う距離に顔を真っ赤にする逢崎。切島自身はその状況を心のどこかで喜んでいたが、逢崎の身を考え、その気持ちを押さえ込んだが、ゴロゴロと鳴る彼女の喉に、彼女も自分と同じくこの状況を良きと考えているのでは無いかと思わずにいられなかった。あんな状況だというのにも関わらず、切島はずっとこのままだったらいいのに、と思っていた。そして、オールマイトが助けに来てくれた時、ほっとした以上にガッカリしている自分に気付き、男らしくない自分の姿に肩を落とした。その為、身を犠牲にし逢崎を庇った事を麗日と蛙吹に褒められたが、素直に喜べずにいたのだ。
 その邪念を断破すべく、切島はロッカーに頭を思い切り打ち付けると、隣で着替えていた上鳴が肩を上げ驚いた。


「何!?切島どうした!?」
「…男らしくねえよな。」


 切島の呟きを聞いた上鳴は首を傾げ、その呟きの答えを追求したが、切島はダンマリだった。別の事を考えねえと…。そう思ったが、どうしても先程の記憶が鮮明に蘇り、何度もロッカーに頭を打ち付ける羽目になった。


「おい、切島。お前、ホント大丈夫か?」
「いや、もうダメかもしんね…。」


 俺の不純な気持ちを知ってか知らずか、逢崎に手を叩かれたし。と、切島は叩かれた手より、はたまた、打ち付けた頭よりもそれに酷く心が傷付いていた。



fin.

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