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【WJ】短編 -2-

第10章 【甘】ヒーロー失格/切島鋭児郎


『切島少年!逢崎少女!大丈夫か!?』


 インカム越しにオールマイトの声が聞こえた。想像していたような痛みは無く、恐る恐る目を開けた。


「…えっ!?」


 目の前には切島くんの顔。鼻と鼻が触れ合うような距離。なんで?え?どうして?


「逢崎怪我はねえか!?」


 心配そうな面持ちで声を掛けてくれる切島くん。それに小さく何度も頷いた。私の顔を挟むようにして置かれた切島くんの腕。ここで漸く私は今、自分が置かれた状況を理解した。落ちてきた瓦礫から私の身を庇う為に切島くんが飛び出して来てくれたのだと。そして、その瓦礫に埋もれる形となってしまったが、切島くんの個性のおかげで私は大した怪我も無くいられるのだと。ただ、こんな状況だと言うのに、色々とすっ飛ばし、大好きな人とこんな至近距離でいられる事が恥ずかしくて、嬉しくて…。抑えたい気持ちと裏腹にゴロゴロと喉が鳴った。私の気持ちが切島くんにバレてしまうんじゃないかと思いながらも、この状況がずっと続いて欲しいと思ってしまう。でも、それってヒーローを志す人間としてどうなんだと葛藤していたら、私が来た!の声と同時に私達に覆いかぶさっていた瓦礫がオールマイトによって一瞬にして退けられた。


「怪我は無いか!?切島少年!逢崎少女!」
「大丈夫っす!」


 涼し気な顔でオールマイトに答える切島くんは至っていつも通り。あんな事があったのに、切島くんにとっては多分何でも無い出来事。そういう所が好きだし、いいと思ってるけど、今はそれが何だか悔しくて堪らなかった。


「どうした?どっか痛むか?」


 未だ立ち上がらず、寝転んだままの私に切島くんが心配そうな顔をして手を差し出してくれたが、その手を払い立ち上がった。


「別に大丈夫だし。」


 そんな私達を見て、急にオロオロし始めるオールマイトを背に、私はひと足先に倒壊ゾーンを出た。


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