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【WJ】短編 -2-

第10章 【甘】ヒーロー失格/切島鋭児郎


「お、逢崎とペアか。宜しくな。」


 屈折の無いキラキラとした真っ直ぐな笑顔に何だか目眩がし、思わず目を背けた。ああ、私、何やってんだろ。折角切島くんが話し掛けてくれたのに。なんて可愛げが無い…!取った態度とは裏腹にピンと伸びる尻尾。その真っ直ぐに伸びた私の尻尾を見て切島くんが笑ったような気がする。恥ずかしい。これじゃあ切島くんとペアで本当は嬉しいんだよって主張してるみたいだ。それを隠す為に私は本心を隠せていない尻尾を掴んだ。
 オールマイトの受け持つヒーロー基礎学の授業は、くじ引きによってペアが決められる。なんの因果か分からないが、そのくじ引きで入学当初はよく切島くんとペアになっていた。最初は、何だか暑苦しくて嫌だな、苦手だな、なんて思っていたのに、男らしく頼りになる切島くんにぐいぐいと引っ張られ、いつしかくじ引きで切島くんとペアだと分かると、心の中でガッツポーズをする位になった。表面上はいつも通り、別に何とも無いといった表情を取っていた。くじ引きでペアを決めるもんだから、毎回運良く切島くんとペアになるワケじゃないと分かっていても、切島くん以外とペアだと肩を落とさずにはいられなかった。
 ヒーロー基礎学の授業でよくペアになるよになってから、教室で切島くんと話す機会も増えた。猫という個性の影響か、気まぐれな性格の私はどこに行くにもベッタリとくっつく女の子特有の習性が苦手だった為、昔から女の子が苦手だった。だからと言ってクラスの女の子と仲が悪いってワケじゃないんだけど、一人で行動する事も少なくなかった。そんな私に気を遣ってか、切島くんはよく私に話し掛けてくれた。普段ならほっといてよ、なんて思うのだけど、それが何故か嬉しくて、また、陽だまりにいるような気持ちにさせてくれる切島くんの隣は居心地が良かった。
 雄英体育祭以降、切島くんとペアでヒーロー基礎学の授業を受ける事が無かった為、久しぶりの切島くんとのペアに喜びが隠しきれなかった。今日の授業は倒壊ゾーンでの救援授業。設定されたポイントにいるダミーを如何に迅速かつ安全に救助出来るかというのが採点ポイント。くじ引きの結果、私と切島くんのペアは一番最後の組。わくわくしながら今か今かと順番を待った。

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