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いとし、いとし【短編集】

第4章 真っ直ぐな彼【krk 早川充洋】


とりあえず一人で改札を出て、
人の波から外れた柱の近くにやって来た。

ケータイを取り出そうと巾着袋を漁っていると、


「待ち合わせ?」


と、声を掛けられた。


まだ、この場所に来て一分も経ってないハズなのになんでだ。

とりあえず、ナンパらしい目の前の男性は無視を決め込んでケータイを取り出す。

着歴から彼の名前を出して、何度もコールしてみるが、充洋くんには繋がらない。


「捕まらないの?友達?彼氏?」

なんて、話しかけてくるこの人。
正直、本当にうっとうしい。


いくら顔が良くても、森山のナンパが成功しない訳がなんとなくわかった。


だって、ナンパそのものがこんなにうっとうしいのに、

森山の場合は、「運命」だの何だのといった、訳のわからない台詞も追加される。

そりゃ、成功なんてするはずない。


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