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いとし、いとし【短編集】

第30章 寂しさは酒と呑み込む【刀剣 長曽祢虎徹】


自室の障子を開け放って、縁側へと出た。

しん…と静寂が響く夜空。
冷えきった空気に手元の熱燗が身に滲みる。


燭台切が用意してくれるお酒はいつも美味しくて、つい呑みすぎてしまう。

けれど…

いつもと違うのは、呑みすぎた後に介抱をしてくれる彼が居ない事だ。


「そろそろ帰ってくるはずなんだけどな…」

寂しさが言葉となって口からもれる。

日中、皆の前では寂しさなんて悟られぬ様、それなりに気丈に振る舞うが、今は執務を終えて自室に一人。

ちょっとの弱言くらい許されるだろう…。

はぁ…とため息をついて、熱燗を一口。


すると、ばさりと肩に羽織が掛けられた。
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