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いとし、いとし【短編集】

第30章 寂しさは酒と呑み込む【刀剣 長曽祢虎徹】


ハラハラと雪が舞う夜空に半月が浮かんでいる。

所詮、酒呑みの私はここぞとばかりに雪見酒をすべく厨へと向かった。




「呑みすぎないようにね」との小言と共に燭台切から熱燗とお猪口を受けとると、同じく厨に居た大般若が「お気に入りの一振りは居ないのかい?」と私に訪ねてくる。




「雪見酒なら、一人ではなくお気に入りの一振も必要だろう?誰か居ないのかい?」と。




お気に入り…か。


思い浮かぶのは、少し長めの襟足と広い背中。

皆に見送られ旅立つ後ろ姿。


4日がこんなに長いなんて思わなかったな…。




「一人で静かに呑みたいの」



大般若にそう答えて厨を後にした。

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