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いとし、いとし【短編集】

第24章 剥き出しの正義は辛い【krk 宮地清志】


「どうゆうつもりだよ…」

清志くんの声が静かに響く。


「だって、ムカつくのよ。従妹だからって何?清志もベタベタし過ぎじゃない?この子一人じゃ何も出来ないわけ?なんで、何事にもそっちが優先されてるの?彼女は私じゃないの?それだけでもムカつくのに、見てるとなんかイライラするのよ。デカイ身体して下向いて、おどおどして…」

綺麗な先輩は、そう言って私の方を睨んだ。


「クラスの男子がね、『宮地の従妹は悪くない』って言ってたわよ。デカイくせに意外とモテルんじゃない。でも、みんな清志が突っぱねてるんでしょ?折角だから、紹介してあげたのよ。あなたにも相手が出来れば、清志がくっついて無くても済むでしょう?」


蔑む様にこちらを見下ろす先輩は、
どうやら清志くんの彼女だったらしくて、


その事をはじめて知った私は…

彼女の怒りの矛先が自分に向く事に、妙に納得してしまった。


「お前、ふざけんなよ‼何したか、分かってねーのか?」


私を庇って怒る清志くんの声。


私は…

いつも側に居てくれる清志くんに、
困った時には助けてくれるこの兄弟に、
甘え過ぎている。


小さな頃からそうだから、
それが当たり前になってしまった…


だから…
知らない内に…

こんなにも、この先輩を傷つけてしまっていたんだ…。

今だって、

私の為に怒る清志くんに、先輩はすごく傷ついている。





「ごめん…なさい…」


私の呟きに二人の視線がこちらを向いた。



「もう…清志くんを頼りません。甘えません。ごめんなさい。でも…お家、だけは、許して…下、さい。
私…母が、居なくて…。父は今、海外に出張中で…兄は大学の寮で、頼る所が二人の家しか…無いん、です。だから…。ごめんなさい。ごめん、なさい」



じゃり…じゃりじゃり…


地面を踏み締める音が聞こえる。


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