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Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変―

第6章 「最後の審判」JUDGEMENT


 以前から、寿能城代らアプリコーゼン関係者に不信感を抱いていた新羅隆潮(文部)は、この戦乱を奇貨として、彼らを排除しようと考えていた。しかし、大森蒲田統合軍管区の最高指導者である池上町奉行秀忠(いけがみ まちぶぎょう ひでただ)との作戦会議に際して、事態は急転する。

新羅隆潮
「…何? 恋生(れんしょう)教徒どもが、妾に対して謀叛(むほん)…だと!」

池上 町奉行 秀忠
「新羅ちゃんが愛生(あいせい)教団を迫害した事に、怒っているみたいだよ。でも、このタイミングで反乱って事は、きっと裏で操っている人が…」

隆潮「さては、寿能城代の仕業じゃの? やはり、あ奴も恋生の一味じゃったのか。もう少し早く、潰しておくべきじゃった…して、賊徒の総勢は?」

秀忠「公然化しているのは数百人程度だけど、隠れ信者も加勢したら、十万人以上に達するって報告もあるよ」

隆潮「じゅ…十万じゃと? ただでさえ戦時中だと云うのに、青少年を不健全な宗教に汚染するなど、断じて許せぬ! じゃが…妾の軍勢は今、生田・斎宮・美保関らの追跡に向かっておる。併せて、寿能城代も片付けなくては…」

秀忠「その件は、後回しで良いんじゃない? あの子達が敵国に内応しているって話は、まだ充分な証拠が揃ってないし。それよりも今は、暴動対策を優先しよう」

隆潮「…そうじゃの。なれば早速、恋生軍との合戦を始めねばならぬ。我ら第四中隊の主導により、大森に、東京に、果ては天下に…新秩序をもたらすのじゃ!」

 愛生教(恋生教)とは、メシア暦2010年以降に急速な勢いで信者数を増やし、一躍有名になりつつある新興宗教である。芸術を司る九人の女神(Muse)を信仰するなど、ギリシャ・ローマ神話の影響を受けた宗教だと考えられるが、その実体については未だ不明な部分も多い。愛生教徒の特徴として、「信仰告白のために武装して行動する」という点が挙げられる。取り分け、女神を崇拝する儀礼において「ブレード」と呼ばれる光線剣を振り回すなど、その「好戦的」な側面が警戒されている。一説によれば、禅定門念々佳や美保関少弐・寿能城代なども愛生教徒ではないかと言われており、新羅文部が大森義勇軍アプリコーゼン中隊を執拗に敵視して来たのも、それが一つの理由である。
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