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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


10Dが12Sの機体を起こし呼び掛ける。
「あぁ、なんとか……でもこれじゃあ動けない。せっかく新しい機体にしたばかりなのに、残念だ」
置いていけ、とばかりに12Sが力なく微笑んだ。ブラックボックス信号が切れればバンカーでまた復活することが出来る。12Sが今のうちにログデータを更新したら、ここ数日の任務内容と今日の10Dとの共闘も忘れずに済む。
『………。』
しかし10Dは納得しなかったようで、しゃがみこんで12Sの右腕を掴むとそのまま背を向けて12Sの機体を引っ張った。
「あっ……10D、駄目だ。下ろしてくれ」
武器をポッド107に持たせて、10Dは12Sを背負い込む。
『大丈夫。雑魚ならポッドだけで倒せるし、強いのが居たら一旦安全な場所に下ろして戦うから心配いらない。』
「それは頼もしい……だけど、この損傷じゃ新しい機体にした方が合理的だ。君も僕を背負って帰らずに済む」
両手が塞がった状態で行動するなんて危険だ、と12Sが下ろすように促す。しかし10Dにはそんな気は毛頭無く、立ち上がって歩き始めた。
「……本当に連れていく気なのか」
『もちろん。まだどうにかなる見込みはあるでしょ。』
「はは……粘るなぁ……」
10Dの説得を諦めた12Sは大人しく背負われる事にした。
『12S、出口までどの通路が近い?。』
「そうだな……あそこから入って真っ直ぐ行った先のスロープを降りたらホールに繋がる。探索のときに確認した」
『分かった。』
10Dが指し示された方向へ進む。足場は所々濡れているため、滑らないように気を付けた。
「10D……」
『何?。』
「そっちじゃない、あっちだ」
12Sは少し呆れた様子で再度指差す。
「……本当に方向音痴なんだな」
『愛嬌だと思っといてよ。』
今度こそ指定の通路に入った10Dはそのまま直進を続け、言われていたスロープを降りてホールへと抜けた。
先刻10Dが弄んだクジラの骨が視界の端に確認できる。入ってきた所まで辿り着いた、と10Dは一息吐く。
『ポッド、最寄りの駅までの道標をお願い。』
「了解。目的地をマップにマーク。ゴーグルに転送」
それと同時に10Dの目の前に矢印が映る。
「あぁ……ちゃんと方向音痴の対策はしてるのか」
『まぁね。私のポッドが付けてくれた機能なの、すごく助かってるよ。』
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