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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


頭部の亀裂の入り具合からして後ろからの方が攻撃しやすい。
ハッキングで隙を作れるのはほんの一瞬だ。油断してかかれば先程のように想定外な痛手を受ける可能性がある。
まずはサメ型機械生命体の死角になる場所まで回り込まなければ、と少し離れたところを気付かれないように慎重に進む。
幸い機械生命体は12Sに気を取られている。
好機を逃すまい、と10Dはサメ型機械生命体の斜め後ろまで移動した。
12Sがサメ型機械生命体をハッキングして、動きが鈍った瞬間を狙う。
単純なことだ。落ち着いてやれば難しくはない。
緊張しないよう自分に言い聞かせ、10Dは武器を握り直す。
「10D、今だ!」
12Sの声を合図にサメ型機械生命体の背に飛び乗り、頭部に刃を向ける。
『(……見えた。コアがある)。』
薄く光る機械生命体のコア目掛け、10Dは小剣を突き刺した。
その瞬間、グラリと足元が揺らいだ。
崩れるようにサメ型機械生命体は力無く横転する。
『やった?。』
「やった! 10D、爆発させるから離れて!」
12Sの呼び掛けに従い、小剣を引き抜きその場から飛び退く。
一瞬の間の後、サメ型機械生命体の頭部がハッキングにより爆破された。
『良かった……倒せたね。』
「うん、データも取れたし倒せもした。悪くない結果だ」
頭部の焼け焦げた機械生命体に近付き、戦利品に相応しい部品を拾っていく。
光を失ったコアの欠片を拾い上げ、10Dは先日の駅廃墟での事をふと思い出した。
自分にとって哀しく悔しい記憶だ。きっと機械生命体のコアを見るたびに思い返すことになる。
コアの欠片を捨てるかポシェットに収めるかで迷っていると、近くで錆びた金属が軋む音がした。
多分12Sが機械生命体の内部を開いているんだろう、と考え振り返りはしなかった。
「10D、危ない!」
予想もしなかった言葉と機体にぶつかる衝撃に、理解出来ないまま少し離れた所まで突き飛ばされる。
自分の手のサイズと同じ、掌と5本の指でしっかりと押された感触が背中にくっきりと残っている。
12Sは危ないと言って突き飛ばした。
後ろでグシャリと何かが潰れる音がする。
何かって。振り返って見ないと。多分、12Sが。
「報告:12Sが敵の攻撃を受け戦闘不能」
ポッド107が銃口を後方へ向けた。
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