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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


次の通路を進むと「水中トンネル」と書かれたプレートが見えた。
しかしそれらしき展示はなく、床が透明な板張りの幅1.8m程の通路には大量の瓦礫が道を塞いでいた。
天井も崩落したようで、トンネルに使われていたであろうガラスや展示のハリボテ岩の山の上に天井のコンクリートや鉄筋が乗っかっていた。
『ここから上の階に行けそうだね。』
瓦礫を踏み台にし、天井に空いた穴から1つ上のフロアに侵入する。
入った部屋は今までの内装とは打って変わり、随分と質素なものだった。
剥き出しの配管や適当に塗られた白いペンキの壁は何とも無愛想で、とても迎え入れるような部屋には見えない。
『ここは?。』
「推測:従業員通路」
黄ばんだり剥がれたりしている壁を触りながら先へ進む。
幾つかの部屋を通過すると、先程の巨大水槽が階下にあるであろう場所まで来た。錆びた柵が囲む下には幅3m程の丸い穴が開いている。
その穴から50cm程の短い梯子が垂れていた。水槽に人類も出入りしていたと考えると、この梯子に掴まって自力で上に上がれるくらいたっぷりの水が張られていたことになる。
『下は深いね。ポッド無しで降りたら壊れちゃいそう。』
「否定:下に降りる必要はない。下には12Sは居なかった」
『もー、ただの仮定の話だよ。』
真面目に返さないで、と10Dはポッド107を連れて通路に出る。
更に進んだ先で朽ちかけた防火扉をポッド107のレーザーで強引に開けると、また水槽が並ぶ黒い空間に戻った。
『あ……っ!。今あっちで何かが動くのが見えた。』
10Dが通路の先を指差し、その方向へ走っていく。
通路から出るとそこは屋内ではなく、大きく拓けた会場のような場所だった。
大きな水溜まりを中心に階段と座席が放射状に広がっている。
急に吹き付けた潮風が10Dの髪を乱した。
10Dは見たことのない景色を奇妙とすら感じながら呆然と眺める。
「疑問:動くのが見えたという何者かの正体」
『あ……そうだった。でも、それらしいのは何処にも居ないね。』
隠れる場所はあるのだろうか。見晴らしはとても良く、誰かが居そうな気配はなかった。
『見間違いだったのかな……。』
風に何かが煽られただけだったのかもしれない。
首を傾げながら10Dが階段を下りていく。
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