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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


「報告:アサリは二枚貝であり、旧人類は貝殻の中にある身の部分のみを食べていた。10Dの食べている箇所はゴミ」
『えー、早く言ってよ。奥に砂が入り込んじゃった。』
細かくなってしまった貝殻を吐き出しながら文句を垂れるが、ポッド107はさっさと任務に戻れと促すように道路へ向けて上昇した。
『待ってよ。』
10Dはやや傾斜のあるコンクリートの壁を自力で登ってポッド107を追いかける。
模様のような溝が沢山あるから登りやすい。
ガードレールを乗り越え、また元来た道を戻り水族館廃墟の前に辿り着いた。
「推奨:早く入る。合流する予定の隊員はもう既に来ている」
『そうなんだ。えーっと、確かS型の?。』
ガラスがすっかり割れてサッシだけになってしまった玄関口を抜けながら仲間の確認をする。
「報告:十二号S型」
『あぁ、そうそう。何だかタイムリーだね。ついこの前5Bに12Sの話を聞いた気がする。』
「報告:その12Sは破損した義体のことで、今回任務を共にする12Sは新しい義体になった12Sである」
『まぁ今日が初対面だから、どっちだろうと関係ないよ。』
広いエントランスを進む。道が幾つか分かれていて、上へ昇る階段や地下へ続くスロープなど様々だ。
『ねぇ見て、大きいよ。』
10Dがエントランス中央にあるガラクタを持ち上げてポッド107に見せる。
「報告:巨大な海洋生物の骨。推測:哺乳類クジラ目に属するいずれかの種類。保存状態から見て骨格標本だと考えられる」
『骨?。こんな大きな魚がいるの?。』
10Dが持ち上げているのはザトウクジラの肋骨の内の1本だった。
骨は30メートル位にわたり散らばっているが、位置は派手に変わってはいない為かなりの大きさだったと推測できる。
「否定:クジラは魚類ではない」
『さっき言ってた哺乳類ってやつ?。』
「報告:人類もクジラと同じ哺乳類である」
ポッド107は胸ビレの位置の近くへ飛び、触角で骨を並べる。
「報告:人類の手や指と同じようなパーツが多く見られる。推測:共通の祖先である生物の名残を哺乳類全般が受け継いでいる」
『あ、本当だ。指の関節似てるね。』
ヒレ先の骨と自身の手を見比べながら10Dが少し感心する。
ほぼ異形でしかない生物同士にこのようなはっきりとした繋がりが存在するなど、想像もしなかったことだ。
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