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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟



空には雲1つ無く満天の星が輝いていたけれど、やはり雨の影響は残っていた。
『1週間ぶりだね、地上。』
「否定:正確には13日間バンカーに滞在していた為、謹慎中の1週間のみのカウントは不適切」
久し振りに来た廃墟都市はどこもかしこも水溜まりが出来ている。
飛行ユニットから下り、泥濘の中を進んでいく。
『ポッド、駅廃墟の方角教えて。』
「了解」
ゴーグルに表示される矢印に従って駅廃墟へ向かう。
今日は足元があまり良くない。戦闘で不利になるだろうと10Dは機械生命体に見つからないように気を付けながら走った。
駅廃墟に到着すると、この前行った3/4ホームへの階段を上る。
冷たい風が吹き込んできた。ホームはとても静かだ。
機械生命体の足音もない。
『(隠した子はどこだろう……)。』
匿わせた場所を覗き込んでみたが、何も居なかった。
『おーい……誰か居るー?。』
あの機械生命体に名前を教えてもらえば良かった、と10Dは少し悔やむ。
何処となく呼びづらいものだ。呼称がない為あやふやな表現しか出来ないまま虚空に呼び掛ける。
そもそも機械生命体に個々の名前が与えられているのだろうか?
地上のアンドロイド達は好き勝手に名付け合っているが、ヨルハ部隊に関しては番号とアルファベットのみだ。
大方、機械生命体も無機質な文字と数字の羅列での判別になっているだろうが、ネットワークから外れた機械生命体であればレジスタンス達のように愛称を付け合っていてもおかしくない。
『名前……。』
羨ましい訳ではなかった。10Dは"十号D型"が自分そのものを差す名前だと認識している。
けれど何故人類とは欠け離れた無個性な呼び方をヨルハ隊員全員に強いているのかと前々から疑問には思っていたのだ。その抱いていた違和感が微かに思考ルーチンを掠めた。
「推奨:目当ての個体が発見出来ないのであれば諦める。今回の目的は現在地より12.6km先の水族館廃墟にあり」
10Dの思慮を余所にポッド107が誘導する。
『……えっ、あ……うん、そうだね。』
ハッとして10Dはポッド107と共にホームからレールの上に降りる。
鉄屑にされた嘗ての列車の横を通り過ぎ、高架線を南に向かって走り出した。


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