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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


「あら、最近マップに表示されないと思ったら……」
聞き馴染みのある声が背後から掛けられる。
窓ガラスに誰かの影が写った。青みのある銀髪が暗闇に反射する。
『久し振り、5B。』
すぐさま振り返って名前を呼んだ。10Dの予想通り、5Bの姿がそこにあった。
「そうね、久し振り。あなたの謹慎の噂はあったけど本当だったのねぇ」
『まぁ、1週間くらい。期間は明日で終わりだよ。それより……何だか湿ってるね?。』
しっとりとした違和感を10Dが指摘する。
「推測:雨」
「そうよ。私の居た地域で結構な雨が降ってたの。ずぶ濡れだったけど、飛行ユニットで飛んでる内に粗方乾いたわ」
スカートの裾を持ち上げながら5Bが答える。
「失礼だけど、このタイミングで謹慎してて良かったかもしれないわね。何十時間も続く酷い雨なのよ。強すぎて防水も信用ならないし、任務どころじゃなかったんだから」
『そっか……。今回の任務はどんなの?。』
「リストアップされた破壊済みのヨルハ隊員の義体を回収することよ。最近は資材難でもあるみたいだから、破損の少ない部品を再利用したいらしいわ。身元の特定可能な義体なら持ち物も本人に返すことになってる」
そこまで言うと、5Bは溜め息を吐いた。
「思ったより上手くいかないものだけどね……」
『何かあったの?。』
「リストに載ってたのは最近壊れた隊員ばっかりだったから、その隊員達の任務の記録を見て場所を割り出していったの。大体は難なく見つかったんだけど……でも、1人だけ見つからなかったわ。どんなに探しても何処にもなかった」
5Bの随行支援ユニットであるポッド036が端末に何やら表示した。
赤毛の少年の画像がプロフィールと共に写し出される。おそらく他の少年兵の例に洩れずスキャナータイプだろう。
「報告:十二号S型。我々と同じバンカーに所属している12Sは小規模部隊γの構成員でもある。このヨルハ隊員は3週間程前に部隊での任務で死亡しており、当時の義体は放置されたままだと部隊長の6Eが記録に残している」
「場所は駅廃墟から東の方にある高台らしいんだけど、それらしい義体はなかったわ。落ちたんじゃないかと思って下の方も探したんだけど、双子のアンドロイドしか居なかったしお手上げ状態よ」
両手を上げ肩を竦める5B。表情から疲労が滲み出ていた。
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