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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


「10D。10Dじゃないですか。僕のメンテナンスに見落としでもありましたか?」
サーバー室の主である27Sだった。10Dは滅多に27Sのメンテナンス屋での購入をすることが無かったため、今回も別の用だろうと思ったらしい。
『あ、いや……メンテナンスは完璧だったよ。違う問題でここに来ちゃって……。』
「あぁ、さてはまた入る部屋を間違えたんですね?」
「正解」
生まれた当初はしょっちゅう自分の元に方向音痴を直してもらおうと通い詰めていたものだ、と笑う27S。
最近はメンテナンス屋や開発部に頼ることを諦めた為、進んでサーバー室に行く頻度も減ってしまっていた。
「少し聴こえたんですが……格納庫に行きたいんですか?」
「報告:10Dが昼の地帯を見てみたいと言って聞かない」
『あっ、ポッド……!。』
告げ口をするな、と10Dがポッド107のボディを掴んで音声を出す部位を塞ぐ。
「ポッド、心配しなくても大丈夫ですよ。謹慎中の隊員のIDが登録されている飛行ユニットは機能に制限がかかるので、謹慎期間が終わるまで飛べないんです」
『えっ、そんなの初めて聞いた。』
「そりゃあ、謹慎中は皆部屋で大人しくしているものですからね。知る必要もなかったんですよ」
ガッカリしたように溜め息を吐く10D。
「結果的に企みは失敗した訳ですが……夜の地帯担当にも関わらず、しかも謹慎中に勝手に抜け出して昼の地帯に行こうとしていたのは赦しがたいことですね。このまま見逃せば謹慎明けの地上に降りるタイミングで昼の地帯に逃げるかもしれませんし」
『その手があった。』
「ダメですよ。あなたに限ってはGPSも付いているんですから、すぐにE型が飛んでくる筈です。あなたは廃盤になることが決まっているので、この機会に残り全ての義体が処分されることも有り得るんですから勝手な行動は極力控えてください」
27Sの推測を聞いて10Dはハッとする。処分されたら14Oとの約束を破ってしまうことになるのだ。
それに殉職ならまだしも、逃亡の末の処罰だなんて恥でしかない。
『……諦めよう。』
「賛同:お利口さん」
ようやく気持ちを落ち着かせた10Dの頭をポッド107が褒めながら撫でる。やれやれ一息ついた、といった様子だ。
それを煩わしく感じた10Dは、頭部に触れるポッド107の手をゆっくり叩き落とした。




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