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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


せっかく上手くいったのに、忘れてしまうのだ。
14Oを喜ばせたいと思った気持ちも、14Oの為に考えて作った花の模型も、渡した時に見せてくれた優しい微笑みも。
『タイミングが……悪いな。』
溜め息を吐いてベッドに寝転がる。
特殊な機械生命体との遭遇や14Oとの急展開はここ十数日間に起こったことだ。それまでは物資の調達がメインの活動だったため代わり映えのしないデータしかなく、消えてもあまり惜しまない内容だったというのに。
『ポッド、私今月の記憶は失いたくない……。』
10Dは枕元に浮かぶポッド107に助けを求める。
「推奨:日誌を書く。これまであった印象深い記憶を、感情なども含め書き残していく。そうすれば、新しい義体になりデータを失った時に読み返すことが出来る」
『日誌……?。』
ポッド107は枕元から部屋の外を指差す。指は転送装置のある方角に向いていた。
「推奨:端末にメール用の文章作成ツールがある。そこに日誌を書き留め、バンカーにあるメールBOXに送信する。この方法なら何時何処でも記入でき、新しい義体になってもバンカーから確認することが可能」
『あー、それなら良さそう。用事済ませたらやってみる。』
バンカーから出られない1週間の暇潰しになる、と10Dは端末を出し目的のウィジェットを開いて確認する。
いつもリアルタイムの通信ばかり行っているため、指で一つ一つ文字を打ち込む作業は馴染みがない。ほぼ触らなかったせいでアプリケーションの存在すらあやふやだ。
『結構単純なシステムだから簡単に使えそうだね。……じゃあ、さっそく司令官の所に行って、それから6Eの隊に連絡を入れよう。』
それが終わったら取り掛かろう。端末を閉じるとベッドから立ち上がり、ポッド107を連れて部屋を出た。



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