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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


「ちゃっちゃとメンテナンスしたいんで、いい加減離れたらどうです?」
呆れた口調で27Sが手で隙間を割るようなジェスチャーを取る。
年がら年中バンカーに居るメンテナンス専門員だ。この程度のアンドロイド模様は見飽きているのだろう。
「……じゃあ10D、私はこれで仕事に戻りますね」
『うん、いってらっしゃい。』
花の模造品を両手で包み込みながら14Oは出ていった。
それを10Dが手を振り見送る。
「10D、D型のくせして機械生命体相手にハッキングを行ったって本当ですか?」
『本当だよ。S型はいつもあんな意味分かんない方法で攻撃してるんだね。』
セルフハッキングならもっと単純な構造してるのに、と10Dは列車型の機械生命体をハッキングした時の複雑さを思い返した。
「駄目じゃないですか。D型が得意な回避は物理攻撃にしか通用しないんですよ」
何の為にスキャナータイプが居ると思っているんだと軽く文句を言いながら27Sが10Dをベッドに戻らせる。
「論理ウイルスはワクチンのおかげで治まったでしょうけど、投与される前の感染の影響で破損した部分があるかもしれないので入念にチェックします」
『わかった。』
27Sの掛ける言葉に従って、手足の駆動を確かめたり各機能に異常が無いかを調べていった。
メンテナンスを受けながら、迷い癖も何かのきっかけで治らないものかと期待を寄せる。けれど27Sからはそのことについて何も言われなかった為、少々がっかりした様子で27Sを部屋から送り出す。
メンテナンスの結果、パーソナルログデータが更新不可になっていることが分かった。
パーソナルデータ自体の破損は無いものの、バックアップを取る機能が壊れているらしい。厳密には壊れていると言うより失われている状態に近いようで、修復するのは大変困難だと言っていた。
タイミングからしてやはりウィルスが原因だろうと27Sは推測している。義体を新しい物にしたらまた更新可能になるかもしれないそうだ。
けれどどのみちアップロードしていない今のデータは消えるため、現在使っている義体を極力壊さないようにするしかない。
最後に更新したのは1ヶ月程前だ。10Dが14Oに何かしたいと思って行動してからまだ少ししか経ってない。
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