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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


渡す直前でこんなことになるなんて……いっそレジスタンスキャンプに置いてくれば良かった、と後悔ばかりが募る。
「……いえ、これで結構です」
落ち込む10Dの手から14Oが花を模した金属を拐う。
「私はこれで十分満足ですから、作り直しなんてしなくて大丈夫ですよ」
『え、でも……。』
壊れてるから駄目だと10Dは取り返すために手を伸ばした。
すると透かさず14Oがその手を掴み上げる。
「10Dは細かい作業が嫌いでしたね。きっと普段なら絶対にしないような手間を掛け、時間を掛けて完成させたんでしょう」
この傷はその時についたものですよね、と14Oが指先の傷を親指の腹で撫でた。
「私の為に苦手なことでも真剣に取り組んでくれたんですね。私が何を見たら喜ぶか、どうしたらお礼になるのかをちゃんと考えて行動してくれたんでしょう。あなたのその気持ちがとても、とても嬉しいんです」
花の模造品を優しく掌で包みながら、14Oは10Dに微笑みを向ける。
「ありがとうございます、10D。大切にしますね」
『こちらこそ……いつもありがとう、14O。これからも、私が全機無くなるまでよろしくね。』
「縁起でもないこと言わないでください。私とポッドがしっかりサポートしますから」
14Oが10Dの頭をそっと撫で、それに応えようと10Dが14Oを抱き締める。
探り探りの不器用な動きだったが、10Dは確かに14Oへの気持ちを伝えられたような手応えを感じていた。
「ンー、オホンッ……!」
廊下側でわざとらしい咳払いが聞こえ、2機が部屋の出入り口の方を見る。
「失礼します」
いつの間にか開きっぱなしになっていたドアからメンテナンス係の27Sとポッド107が入ってきた。
「あら、まだ通路に突っ立ったままでも良かったんですよ?」
「気付いてたんなら早く切り上げてほしかったですね……」
27Sは数分前から既に来ていた様子だった。14Oも早くからそれに気付いていたらしい。
くっついたままの10Dと14Oの元にポッド107が近寄った。
『ポッド、おかえり。』
「報告:ただいま。検査の結果、当機に論理ウイルスの感染は無し。引き続き10Dを随行支援する」
『よかった。無茶してごめんね。』
10Dはポッド107も抱き締める。14Oと同じくらいポッド107のことも大切なんだと気持ちを示したかった。
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