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よるがあけるよ

第4章 水族館廃墟


『ご、ごめん……収拾がつかない事態だったから、つい。』
「そうは言ってもハッキングだなんて……6Eの判断によっては最悪感染直後に殺されていたかもしれないんですよ。代わりの義体があるとは云え、あなたの分の義体はもう残り少ないんですから慎重に行動してもらわないと……」
14Oがよく言い聞かせるように10Dの両肩を掴む。
方向音痴が発覚した10Dは義体を新しくしても欠陥が直ることはなかった為、義体が無くなり次第自我データ諸とも廃盤にすることが決まり少ロットしか用意されなかった。
残りはあと一桁程度だろう。ディフェンダーでなかったらとっくの昔に消えていた筈だ。
『うん……ごめんなさい。もうハッキングはしないし、義体が壊れるような無理もしないから。』
「本当ですか? ……約束ですよ」
『わかった、約束する。』
10Dが頷いたのを確認すると、14Oは立ち上がって今後の予定をまた繰り返し聞かせた。
「いいですか。くれぐれも忘れぬようにお願いします」
『了解。……そう言えば、ポッドは?。』
「ポッド107は現在論理ウイルスの感染の有無を確かめる為にメンテナンス係に預けています。後でこの部屋にメンテナンス係が来る予定ですから、その時一緒に戻ってきますよ」
そう言って、14Oは部屋から出て行こうと背を向けた。
見送る10Dは14Oの後頭部で揺れるゴーグルを見てハッとする。
『あ……。そうだ、花……!。』
10Dがベッドから飛び下り、机の上に置いてあった自身のポシェットを開け中身を取り出す。
「……どうしたんですか?」
急に慌ただしくし始めた10Dの様子に、14Oが振り返る。
『あのね、私ポッドと一緒に14Oへのプレゼントを作ったの。でも、これ………。』
14Oにポシェットから出した物を見せた。
駅廃墟での戦闘でぶつけてしまったのだろう。茎を模した部分は完全に折れ、レジスタンス達に手伝ってもらった花弁の部分は所々欠けてしまっている。
『いつも14Oにはお世話になってるからお礼がしたくて……ポッドから14Oは花が好きって聞いたから人類データにあったものに似せて作ったの。だけど壊れちゃったから、また……新しく、作らなきゃ……。』
みるみる声のトーンが下がっていく10D。
せっかく作ったのに。14Oが喜ばせることができると思ったのに。
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