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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


「僕だって地上に上がりたいんです。だけどこの大きな体じゃ上手く登れなくて……少しずつ堆積していく足場がいつか僕を地上に辿り着かせてくれるんじゃないかと期待しています」
確かにこれだけ大きければ体重を手足だけでは支えられないだろう。
『いつか出られるといいね。ここは君にとってはかなり狭そうだし。』
堆積物はまあまあ高く積もっているのだろう。
現在、丸頭は胸まで露出していて、腹から下はまだ下に埋まっている。そこらの建物と同じような大きさの肋骨から見るに、平均的なアンドロイドの身体のバランスを参考にすると見えてない部分もかなり大きいはずだ。
「推測:アンドロイドや機械生命体などが落ちてくる偶然はあまり頻繁ではない。この渓谷の規模や環境では、地上までの登攀が可能になる程度にそれらが積もるまで数千年の経過では済まない可能性が高い。推奨:遠くの堆積物を足場の維持に影響がでない分量をここまで運び積む。または地殻変動で奇跡的に渓谷が地上に近くなることを祈る」
ポッド107が助言すると、丸頭は浅く1度頷いた。
「腐葉土を運んで積み重ねる作業はよく試しています。ですが、雨が降るたびに元通りになってしまうんです。もちろん全てが無駄になるということはないですが……ついこの間の大雨でもまあまあ流されてまた平坦になってしまいました」
『こないだの大雨かぁ。結構ひどい雨だったって私の仲間も言ってたな。』
肩を落として辺りの腐葉土を見回す丸頭。
10Dはどうにかしてこの丸頭を助けたいと思ったが、自分ではどうにも解決できなさそうだったため同情的な言葉はかけないようにした。
変に期待させるのは却って相手に悪いだろう。
「ええ。雷が絶えず落ち続けて、雨で溺れそうになって……とっても大変でした。あなたの仲間も被害に遭われたんですね」
丸頭が溜め息を吐くような口調で言う。
10Dは、この渓谷に落ちる直前に会った5Bのことを思いだして少し心細さが戻ってきた。
あれから1週間も経っている。今頃はもう新しい10Dが私の代わりをしているはずだ。
地上に戻ったところで、帰る場所なんてあるんだろうか。
「そうだ! あなた達のこと聞かせてください。ヨルハ……部隊、でしたっけ? 気になります」
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