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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


それはアンドロイドの内部構造を保護する胴体部分の骨組みと似ていて、それでいて守るべき中身はなく湾曲した胸郭の向こうは空っぽの状態だった。
どこかで見たような姿に、10Dはいつかの水族館廃墟にあったクジラの骨格標本を想起する。
あれは肋骨……とポッド107が教えてくれたのを不意に思い出した。
両手で掬うように持ち上げられた10Dは丸頭の見せた巨躯に驚きつつも、突然の確実な希望に目を瞬かせる。
『……すごい!。これなら地上に戻れる!。』
抱いているポッド107を声を弾ませながら更に抱き締める。もう崖に貼りつく必要も、腐食を恐れながら海を目指す必要もない。
『ありがとう、本当にありがとう!。君とここで会えて、本当に良かった!。』
喜びながら丸頭に目を向けると、10Dとポッド107はゆっくりとまた腐葉土の上に降ろされた。
『…………?。』
「喜んでもらえて嬉しいです。もちろん、あなた達のことはちゃんと地上に戻します」
10Dは訝しげに、再度持ち上げる気配のない丸頭を見上げる。
「ただし、もう少し僕と……ここに居てください」
相手の希望を叶える代わりに自分の要望を請けさせる、つまり交換条件だ。
短くて単純な要望を聞き、10Dは安心する反面わずかに憐憫を感じた。
丸頭の表情は相変わらず歯しか動かないものの、呻くような声色が寂しさで満ちている。
軽くあしらってはいけないような気がして10Dは深く頷いた。
『わかった。どれくらいここに居たらいい?。』
断ったら地上に上がれそうにないというのもあるが、目の前の丸頭を放っておく行為が10Dにはひどく憚られるようなものに思えた。
「1日……最低でも1日程は僕と一緒に居てください」
人差し指を立てる丸頭に、10Dは了承して頷く。
『いいよ、君と一緒に居る。』
「報告:24時間後にタイマーを設定」
タイマーのアラームが鳴り次第また地上に戻るための催促をしよう。ポッド107のボディを撫でながら10Dは1日後に期待を込めた。
「ありがとうございます。…………僕ずっとここに一人ぼっちで、いつもとっても寂しくて……たまに落ちてくる機械さん達も、最初から動かなくて……」
丸頭は悲しげな口調で10Dに頭を近づける。思わず半歩後ずさってしまった10Dは、何となく後ろめたさを感じて下げた足を元の位置に戻した。
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