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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


『ねぇ、ここから地上に上がりたいんだけど出口知らない?。崖を登ろうとしたけど全然ダメで……この渓谷を歩いていけばどこかに出られたりとかできそう?。』
「あっ、それでさっきから僕の上に何度も落ちてきてたんですね。てっきり嫌がらせかと思っちゃいました」
思い出したように丸頭が10Dの崖登りに言及する。
『ごめん。』
「いえいえ、もう気にしてません。僕がいるって知らなかったなら仕方ないですもん。あと……この渓谷はどこまで行ってもずっと深いままですよ、残念ながら」
遠くを仰ぎ見るように顔面を揺らす丸頭。その動作に釣られて10Dも振り返って見る。
「何十kmも先の向こう側は行き止まりで、その反対側には洞窟みたいな穴があるんですけど腐葉土に塩水が混じってチャプチャプしてるせいでそこから先には進めません」
『塩水……!。海の方向かな?。』
「推測:メンテナンス不足により10Dの防水性及び耐食性が低下しているため当該エリアへの進入は危険である。推奨:最終手段として保留」
海に繋がる道があるようだが、むやみに入っては壊れてしまうだろう。10Dだけではなくポッド107も同様に耐えられないはずだ。海水が引いていない限り希望はなさそうだった。
「他にも誰かいるんですか……?」
「当機はポッド107。10Dの随行支援装置である」
敵意が確実にないと分かるまで紹介したくなかった10Dだが、ポッド107から自己紹介をしたのでまあいいかと呑み込んだ。
『他には?。登りやすい崖とかはない?。ここに落ちてきた機械で崖から地上まで登っていったアンドロイドとか機械生命体はいる?。』
「いない……けど、心配しないでください! 僕があなたたちを上まで持ち上げます」
『そんなことできるの?。』
「ええ、もちろんです。だって僕……」
その言葉と共に、土中で何かが動いた。
足場の震動と沈下によってグラつき、その場で転倒する。ポッド107を落とさないようにするので精一杯の10Dは起き上がることもできずに丸頭を見上げた。
「手を伸ばせば地上まで届きますから!」
快活な声色と合わせて10Dの義体が少し上昇する。腐葉土から出てきたのは丸頭の首から下の部位だった。
頭だけの存在だと思っていた10Dは呆気に取られつつも丸頭の体に目を向ける。
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