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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


『………………。』
応えるべきだろうか?。応えて大丈夫だろうか?。
気配を感じた時点でこちら一帯に攻撃を仕掛けてこないのが幸いだったが、それは敵対心がないという確証が持てるわけでもなく友好的だという証明にもならなかった。
10Dは無反応を維持しつつも逡巡を重ねていた。
どうするべきかポッド107に聞きたかったが、これ以上音を立てれば確実に見つかってしまう。
黙っていたとしてもポッド107が何かしら言ってくるだろう。どのみち見つかるなら、わずかな希望を信じて相手の前に出てみよう。
『いるよ……ここにいる。』
10Dは上体を起こし、目の前の丸頭を見据えた。
ポッド107を固く抱き込み、すぐにでも立って逃げ出せるように脚を曲げてかがむ。
「わぁっ、そこにいたんですねぇ」
姿を現した声の主を覗き込もうと丸頭が近付いてくる。
目前に迫る丸頭を脅威に感じた10Dは威嚇の意を込めて立ち上がった。あまりにも大きすぎる相手には意味のない行為だが、10Dにとっては精一杯の対応だった。攻撃や逃走を選択するにはまだ早い。
『私……私はヨルハ部隊の10D。君は?。』
平静を装いながら名乗り、丸頭に紹介を促す。
不安定な足場、逃げ場のない渓谷、敵か味方か分からない明らかに強そうな相手。
何を取っても最悪だった。これで丸頭が敵対的だったら尚のこと最悪だ。
「僕? 僕は…………」
警戒しつつ10Dが返答を待つ。
「………………誰だったんだっけ?」
唸るように首を傾げながら丸頭がそう言った。
本気で自分が何者か覚えていない様子だ。記憶を探ろうとしているように見えるし、何も分からなくて困惑しているように見える。
『自分が誰だか分からないの?。元々どこから来たとかも?。』
そんな丸頭に10D自身も困惑しながら質問したが、やはり生首は答えられなかった。
「わからないんです……。自分が何て名前だったかも、いつからこんなところに居るのかも」
『そっか……。』
どうやら今のところ敵意はなさそうだ。大きくも弱々しい声で哀しげに唸る丸頭に少しだけ近寄る。
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