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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


土の中から大きな何かが出てきたらしい。何者かの上にあった多量の腐葉土が滑り落ち、そのまま10Dに降りかかる。
10Dは咄嗟にポッド107の開きっぱなしになっている外装を閉じた。間一髪ポッド107の内部が異物まみれになるのを防ぎ、2機は外側が土まみれになるだけで済んだ。
「あれぇ……何もない………気のせいだったかなぁ」
今度は真正面から声が聴こえた。
あどけなさのある口調は少年の声を想起させるのに、聴こえるのはひどく低い音だ。
声帯の周波数の影響だろうか。軽やかな若々しい声をスロー再生させたような印象だった。
ゆっくりとした大きく低い声に探されているのを察した10Dは腐葉土の隙間からそっと正面の何者かを確認する。
『…………?!。』
その何者かは、見たことのない外見をしていた。ひたすら丸く、その表面に無機質な両目と剥き出しの歯が並んでいる。ニンマリとした微笑みを拵えた口角の隙間では、不気味なほど整った歯列が声に合わせて上下していた。
10Dが何よりも驚いたのはその大きさで、そこそこ広いこの渓谷の幅よりひと回りほど小さい程度だった。
おそらく直径は8メートル前後だろう。
頭部だけの異形なのか、他の部位は見当たらない。
これは人語を話す巨大な丸い生首だ。
ゴーグル越しにそう確認し、10Dは目の前の丸頭に話しかけるべきかどうか悩んだ。
敵意があるのかどうか。土中に潜んでいたのをわざわざ出てきたのは自分たちを探すため。でも何をするために探しているのか?
周りの野晒しになっている同胞や敵の残骸は、もしかしたらコイツの仕業のもあるんじゃないのか?
思考を悪い方向に巡らせながら、10Dは緊張し無意識にポッド107を抱く手に力を込めた。
「報告:正体不明の生命体を確認。敵性反応の有無は感知できず」
ポッド107には見えていないのだろう。息を潜める10Dに対していつもの声量で告げる。
それに焦った10Dがすぐさまポッド107のスピーカーを塞ごうとしたため、更に気配が際立ってしまった。
「だ……誰かそこにいるんですかぁ……?」
物音を聞き取ったらしい丸頭が10Dとポッド107の方に声をかけてきた。
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