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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


このままここに留まるわけにはいかない。渓谷を歩いて出口を探すのは非効率的。岩壁を登るのが最短距離。でも登れそうな軌道が見つからない。
グルグルと思考が空回る。段々気が狂うんじゃないかと思えてきた。
『……ポッド、ここから登るよ。しっかり掴まって。』
少しでも望みを懸けて行動しなければ。どう転ぼうとも、何もしないよりマシだ。
もちろん無事に地上まで辿り着けなければマシも何もないのだけど。
やはり登らないことには始まらない。
登攀に再挑戦するため、崖にしがみつく。岩壁の凹凸を見極めて登っていくと、やがてどうしようもない難所にぶつかる。なんとか無理やり登ろうとして、そのまま落下する。
手が滑った。足場が崩れた。理由は様々だけど、何回落ちても前進できている気がしない。登れない場所が増えていくばかりだ。
地面が腐葉土とはいえ、耐久性には限度がある。
いつか本当にここで壊れてしまうんじゃないかと思うと、登るのが恐くなった。
けれど10Dは登るしかなく、崖をよじ登っては落ちるのを何度も繰り返す。
『……………………ごめん、また落ちた。』
腐葉土の上に大の字になったまま10Dが呟いた。
「許容」
ポッド107が短く返答する。絶望気味に地上を目指し続ける10Dに対して、止めることも励ますことも憚られた。
また登ろうと上体を起こした10Dは、ポッド107を抱き直して立ち上がろうとする。
「……ウ……ウゥゥ………」
ふいにどこからか大きな音がした。低いのか高いのか分からない妙なくぐもった音を聞いて10Dは辺りを見回す。
『何の音?。』
「不明。報告:音源は10Dの真下にある」
『真下……?。』
ポッド107の言葉に訝しがりながら10Dは真下の腐葉土を見つめた。
確かに足元から何かの気配を感じる。不規則な振動と、先ほどの妙な音。
『まさか、誰かの唸り声……?。』
そんな馬鹿な。そう思った次の瞬間には疑念が確信に変わった。
「あ~~もぉ~~~! さっきから誰ですかぁ~~?」
声を聴くが早いか、そこら一帯の腐葉土が大きく盛り上がりバランスを崩した10Dはその場で尻餅をついた。
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