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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


「……了承。当機は10Dの随行支援を機能が停止するまで継続する」
10Dの様子に折れ、ポッド107は自身の提案を取り下げ引き続きの随行支援を承諾した。
『絶対だよ。登ってる途中で手を離したりなんかしたら私、下まで拾いに行くからね。』
「了解。記憶領域に刻み込んでおく」
入念に釘を刺してから、10Dは仕切り直すためポッド107を抱えて立ち上がった。
『もっと登りやすい場所にしなきゃ……。』
崖の縁まで見渡そうと渓谷の中心まで移動する。
上を見上げると、濃い色の崖と崖の隙間から細長く薄い夜空が見えた。かなり深く落ちたらしい。ここからあの高さまで自力で登らなければいけないのか、と10Dはいささか怖じ気づく。
少しでもマシな順路を探そうと崖の凹凸を確認し目測でシミュレーションを行った。が、そう都合良く見つかりはしない。
横移動しながら岩壁を眺める。数歩進んだとき、足元が疎かになっていたため何かに躓いてまた転倒した。
『うわぁっ。……何だこの、硬いの。』
躓いた物はそこそこの大きさがある。10Dはそれの上に覆い被さるように倒れ込んでいた。
どうやらそれは10Dとよく似た大きさと形をしている。
『ア……アンドロイド?。私たちの他にも落ちてたんだ。』
横たわる女型のアンドロイドと思しき人形は随分前からここにあるような朽ち方をしている。
壊れた義体は表面も内部も長く雨風に晒されたようで土埃と錆にまみれていた。
よく見ると、辺りには複数のアンドロイドや機械生命体らしき塊がそこかしこにある。そのどれも、一様に壊れているようだった。
「推測:いずれも数ヶ月から数年前に落下したものと見られる」
落下の衝撃で壊れたようなものもあれば、しばらくさ迷った果てに力尽きたようなものもある。
登りきれなかったら10Dも同じ末路を辿るだろう。躓いたアンドロイドを遠ざけるように手で押し退けながら立ち上がる。
『…………。』
両腕でポッド107を抱きかかえ、また岩壁を見上げながら移動を再開する。今度は足元にも気を付けながら歩くため、どことなく覚束ない足取りだった。
登りやすい崖。登りやすい崖。遥か上まで目を凝らして見ていくけれど、やはり目視の時点で確実性に欠ける岩肌ばかりだ。
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