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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


「――おはようございます、10D」
掛けられた声に反応し、10Dが瞼を徐ろに開く。
『ん、ポッド……。』
上体を起こして辺りを見回す。いつの間に倒れていたんだろう。
「報告:前回の任務で崖から落下してから153時間45分経過。現在は6月25日午前2時17分。義体のチェック完了後、本機のメンテナンスモードを終了。信号系統に複数の異常あり」
ポッド107の音声を聴き、10Dは視線を落とした。いつもなら頭上にいる筈のポッド107が、なぜか今は土の上に横たわっている。
『ポッド……?!。どうしたの?。』
「報告:当機は現在滞空機能を喪失している。推測:怪獣型機械生命体の攻撃を受けたことが原因」
転がっているポッド107が10Dに抱き上げられながら淡々と返す。
失ったのは滞空機能だけではない。機体のボディが左右に分離していた。開閉用のストッパーが破損したらしく、レーザーの発射口が剥き出しになっている。
10Dが両手でボディ部分を支え元の形に戻すもたちまち開いてしまう。
『大変、すぐに直さないと。』
助けを求めるべくバンカーに通信を入れようとした。が、繋がった気配がしない。
『あれ……?。誰も出てくれない……なんで?。』
「報告:現在は10Dに信号系統の異常が複数確認できている。その1つにブラックボックス信号が含まれる。推測:本機10Dは既にロストしたと判断され、新しい10Dを用意する過程でこちらからの通信を無効にした可能性がある。結論:救援を呼ぶ手段はない。」
『そ、そんな……。』
ポッド107の言葉に絶句する。誰も助けに来ないのも衝撃的だが、それ以上に自身がもういない存在になっていることがショックだった。
「報告:バンカーとの通信の代案として、10Dの端末からバンカーのメールBOXへ救助要請を送った。推測:日誌のフォルダにしか送ることができなかったため、文章が他者に発見される可能性は低い」
『………………。』
両手に挟まれたポッド107を見下ろしながらしばしフリーズ状態を保つ10D。
「要請:今後の行動内容の開示」
思考停止した10Dにポッド107が声をかける。10Dは反応しない。
「推測:このままこの場で待機を続けても本機及び当機を救助する者は現れない。推奨:現在地からの脱出方法を考える」
ポッド107が促すと、10Dはわずかに震えながら聳え立つ絶壁を縁まで見上げる。
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