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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


戻ろうにも道がわからない。そしてそれを助けてくれる何者かは現れない。
いつもであれば嫌でも常にポッド107及び14Oが寄り添って10Dを導いた。当の10Dは自身が選んだ方向を2機にことごとく訂正されることに不満を抱いており、余計な助言など要らないとすら考えていた。
もちろんそれは自己過信であり、自認しかねている方向音痴がひとりでに改善されることはない。
補助がなければまともに動いてまわれない自身の性能に煩わしさを感じつつ、それでも思考の大部分では今この場に居てくれていないポッド107や14Oのことを恨めしく思っている。
『私は悪くない……。』
溜め息交じりに一言呟き、しゃがみこんで顔を組んだ腕に埋める。
自ら物理的に遮断した視界はいつにも増して暗く、暗視ゴーグル越しの闇が眼前にあるばかりだ。
近くで足音がする。
何も期待できない。これは機械生命体の足音だ。歩調からして中型二足あたりだろう。
『…………。』
10Dはふと閃いた。
ここでわざと壊されて一旦バンカーに帰還するのもいいんじゃないか。
この知らない場所から離脱できるし、14Oにちゃんと仕事しろとも言いに行ける。この方が都合が良い。
そう思ってその場で襲撃を待つ。
段々と音が近付いてきて、無機質な気配がすぐ目の前まで来た。金属がアスファルトを掠る音をこんなに間近で聴いたのは初めてだ。
顔を伏せたまま機械生命体の攻撃に備える。相手の成すがまま、無抵抗に破壊を受け入れよう。
聴覚センサーを集中させ、通り過ぎていく足音に身を固くする。
『……は?。』
10Dは顔を上げて後ろを振り返って見た。
自身のすぐ右斜め後ろに機械生命体の背中が確認できた。
『ねぇ、待ってよ。』
まさか気付かれないとは思わなかった。
手を伸ばして機械生命体の右脚を小突く。こちらから仕掛けたから今度こそ攻撃してくるだろうと考えたが、目の前の機械生命体は何食わぬ様子で進み続けるだけだ。
『……ハズレか。』
廃墟都市でたまに見かける虚ろな個体の1つだったようだ。例によって大胆にダメージを与えない限り反撃はしてこないだろう。
単調な足取りで離れていく機械生命体を見送りつつ、10Dは仕方ないとばかりに立ち上がる。
『あぁ、莫迦ばかしい。』
一瞬前の自身の企みに嘆息しながら、歩き去ろうとする機械生命体を追いかけて後ろから小剣で殴打した。
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