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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


やや叩き付けるように揺すり続けたが間もなく点滅していた目が完全に光を失った為、もう聴こえないものと判断しホームの下に放り捨てた。
ついでに足元に落ちている本も蹴り上げる。
綻びが限界まで来ていた本が、その衝撃に耐えられず空中でバラバラに散じながら落ちていった。既に活動が停止した機械生命体の周りに黄ばんだ紙が降り注ぐ。
比較的頑丈だった外装が機械生命体の胴の上に落ちた。表紙には「たのしいてつどう」の文字と共に見慣れない形の物体が描かれている。
ホームの縁に残った紙も全部蹴落とすと、10Dは満足げに口角を上げてそのまま階段を降りていった。
『うーん……右か左か。』
レジスタンスキャンプはどちらだろう。改札口を出たところで、少し距離のある左右の出口を見比べた10Dが小さく唸る。
悩んだ末、どうでもよくなり左側の出口へ向かった。
天井から下がる看板に「東口」と印字されていたが、判読不可能なほどに劣化しているため10Dは西側のつもりでそのまま出ていく。
外へ出ると強い風が吹きつけてきた。
周辺にある建物の配置のせいだ、と10Dは眉間にシワを寄せながら道なりに歩く。
徘徊する機械生命体を壊したり、割れたアスファルトの欠片を蹴飛ばしながら暫く進んでいたが一向に馴染みのある景色が見えてこないことに苛立ちを覚えた。
一旦もと来た道を戻ろうと思ったけれど、これまでの経路は既に分からなくなっていた。
また迷ったのか。今回はポッド107が随行していないし、相変わらず14Oとの通信も繋がらない。
10Dは過剰に深い溜め息を1度だけ吐いてから、渋々と端末を開いた。
マップを確認するが地理を理解しない10Dに地図の見方などわからず、有益な情報は得られなかった。
諦めて端末をしまおうとした時、マップに違和感を覚えもう一度確認する。
『……は。』
見慣れぬ小さなアイコンが1つ、マップの端に表示されている。丸い記号に囲まれた"10D"の文字を見て、10Dは眉をひそめた。
現在地のマークがあるにも関わらず、離れたところに自身の名前と同じ印が付いている現象を不可解に思う。加えてその印の場所が崖のど真ん中だということが非常に不愉快だった。
『ポッドもオペレーターもいない。マップもバグってる。……最悪。』
端末をしまい、俯きながらそう溢す。
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