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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


「いえ、いいえ……司令官! 違います、10Dは崖の下です!」
「だから落ち着けと」
「18日にロストした方の10Dのことです! まだ義体が停止していないようなので、急ぎ救援部隊の要請をお願いします……!」
飛び掛かりそうな勢いで嘆願する14Oにやや司令官がおののく。同僚の尋常ではない態度を見て近くにいたオペレーター数名が取り押さえようと14Oを囲んだ。
「あなたたちは邪魔しないで!」
周りのO型を牽制しようとする14Oの興奮を抑えるため、司令官が宥めるような口調で声を掛ける。
「14O、落ち着いてもう一度説明してくれ。……お前たちは仕事に戻ってくれて構わない、わざわざすまなかった」
オペレーター達を引き下がらせ、司令官が14Oの話を聞こうと向き直った。
「知っての通り、現在は作戦の最終調整で忙しい。なるべく簡潔に述べてくれ」
「はっ。……今月18日にロストしたはずの前機10D義体が廃墟都市の渓谷でまだ活動を続けているようなんです。一刻も早く10Dを助けてください、手遅れになる前に!」
「お前にとって落ち着いていられない状況なのはわかった。だが気を鎮めろ。語気を強めるな」
またも無意識に司令官との距離を詰める14Oの姿は、誰の目にも酷く狼狽えているように見えた。冷静さの欠いた14Oの様子はどうにも危うい印象だ。
「同じ型番が同時に……先日の12Sと同じような現象か。だがどうしてそんなにも前機にこだわるんだ?」
「あの子は、他の10Dとは違うんです。新しい10Dより経験豊富で方向音痴の改善も出来ていて、それに、パーソナリティだって……!」
14Oが絞り出すような悲痛めいた声で訴える。
「そうか」
司令官は14Oの言葉を聞いて得心したとばかりに頷いた。
「お前はああいう10Dが良かったのか。だったら心配するな、後でお前の好きなようにデータを書き変えられるようフォーマットの許可を出しておく」
その言葉に14Oは唖然とする。
「え……?」
思いもよらぬ司令官の発言に面食らい、14Oはとっさに後退りをした。
「この話はもう終わりだ。早く仕事に戻れ」
「ま、待ってください! 私が言いたいのは……」
「言いたいことは理解している。だがお前には既に新しい10Dが居るんだ。わざわざ谷底から壊れかけの義体を回収してもコストの無駄になる。その10Dのことは諦めろ」
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