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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


皆この変化を不可解に感じながらも追及はせず、いつしか丸くなった人格が定着しバンカーやレジスタンスキャンプで10Dを嫌うアンドロイドはすっかりいなくなっていた。
無邪気なだけになった10Dに親しみを持ちながらも、14Oは依然として素っ気ない対応を続けた。かつて10Dがした自身への数々の仕打ちをそう易々と赦す気になれなかったのもあるが、理由はもう1つあった。
いつの間にか変わっていってしまった10Dが、また気が付かないうちに元のパーソナルに戻ってしまう可能性があるような気がしたからだ。仲良くなれた頃にそうなったら14Oはどれだけのショックを受けることか。その大きさはあまりにも想像に容易く、そうなるくらいなら初めから打ち解けずにいようと考えた。
しかしながら段々と献身的な人格になりつつある10Dの行動に絆され、14Oは無愛想な態度でいるのが憚られるようになった。やがて完全に警戒するのを止め、遂には大切な存在だと認めて抱擁まで交わした。
10Dの人格がずっとこのままであれば、と願いながら彼女の身を案じていた。
けれど結局は想定通り、元のパーソナルに戻った10Dによって信頼関係は打ち砕かれてしまった。14Oは10Dからの冷淡な素振りにより非物理的なダメージを負い、現在はベッドシーツを涙で濡らしている。
「……。いけない、もう戻らなきゃ………」
泣いている場合ではない。14Oは地上へ向かう10Dをオペレーターとしてサポートしなくてはならなかった。
渋々顔を上げたとき、ベッド端の壁に何か落書きのようなものが見えた。
「…………?」
14Oが気になってそれを注視する。
数字とアルファベットの短い配列を見てパスワードだと自然に思えた。すぐ近くに「メールBOX」と書かれているから、これはきっとそれの閲覧用の鍵だろうと14Oは推測する。
急いで立ち上がり、1番近くのアクセスポイントへ走る。すぐさまメールBOXに先程のパスワードを入力すると、1つのファイルが表示された。「十号D型の活動記録」と題されている。
14Oは周章する気持ちを抑えながらそのファイルを開き、中身を確認した。
今年の4月から始まった日誌のようだ。誰かに読ませるために書いたのだろうか。報告書として見るには拙い文章ではあるものの、間違いなく1つ前の10Dが書いたと思える内容だ。
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