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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


『あぁ、あとソレまだ外してなかったの?。昨日ダサいから外せって言ったじゃん。変なの。』
落胆する14Oが頭に着けている装飾を10Dが指差す。カチューシャのようなそれは、今はもういない10Dのゴーグルだった。
「…………」
『はぁ……もう行くね。地上でのサポートよろしく。』
10Dは14Oの横を通り過ぎ、事もなげな足取りで部屋を出ていく。
「……いってらっしゃい」
言葉で送り出すも14Oは胸を押さえたまま俯いて、10Dに振り返ることはなかった。
遠ざかる足音が格納庫とは真逆の方向に向かっていることがほんの少し愛着を感じさせたが、すぐにスライドドアが閉まりそれは聞こえなくなった。
「……10D、10D…………一体どうして……」
呟きながら14Oは崩れるように床に膝を突き、ベッドに凭れかかった。そのままシーツの上に顔を伏せる。
「…………」
フラッシュバックのように以前の10Dの記録が再生されていく。以前の10Dは最近の14Oの知る10Dとあまり差はなかったが、ただ他人の気持ちをおもんぱかる能力がひどく欠如していた。
それ故にパーソナリティは醜悪気味で、皆からあまり好かれていなかった。
平気で他者に酷いことを言ったり八つ当たりしたりは日常茶飯事であり、司令官相手でも不行儀な態度を取っていた。14Oはそんな10Dの最たる被害者だった。
毎日のようにサポートに対し文句を言われ、顔を合わせれば陰気臭い顔だと罵られ、加えて方向音痴を棚上げし14Oの力不足だという言い掛かりで毎回責められていた。感謝の言葉など一切贈られたことはない。14Oは10Dのことが誰よりも苦手だった。
それが変わり始めたのは1年程前だ。
最初は憎まれ口を叩いた直後にバツの悪そうな顔をしては言い淀んだり、壁を殴る行為を直前で躊躇ったりなどが続いた。
数週間後には誹謗中傷の頻度が極端に少なくなり、意地悪な態度や粗暴な言動もしなくなった。
最も大きな変化は、10Dのあらゆる表情から嫌味っぽさが消え、そして誰に対しても感謝の意を告げるようになったことだ。
初めて10Dの口から「ありがとう」という言葉を14Oが聞いたとき、その場の全員が驚いた様子で10Dを2度見し聞き間違いではないかと顔を見合わせ首を傾げた。14Oに至っては何か悪いことの前触れだと思い恐怖すら抱いた。
それ程までに10Dの更正ぶりは奇異なものだった。
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