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よるがあけるよ

第7章 大規模侵攻作戦


『んー……記録ねぇ。』
メールボックスの前で10Dが独りごちた。
前機の自身が遺した文章を流し読みし、すぐに閉じる。最後の方は文字化けが酷く理解が出来なかったようだ。
『まっ、興味ないや。それより準備しなくちゃね。』
確認し終わった10Dは踵を返し自室へと戻る。いつも通り遠回りになってしまったが、10Dは気付かない。
『起きた翌日が大規模侵攻作戦だなんて、ついてないなぁ。』
伸びをしながらベッド脇に置かれた衣装に近付く。全身を覆う重装備で出撃するようにと配られたものだ。
慣れない武装を戸惑いながら装着し終わったところで、部屋に14Oが入ってきた。
『あ、何か用?。』
「10D、状態は万全ですか? 作戦開始時刻まであと6時間もないのでそろそろ出発してはどうでしょう。もし不調であれば…………随行するポッドも無いことですし、今なら待機の申請が間に合います」
そんな提案をする14Oの様子は明らかに10Dに「行くな」と言いたげだった。
今回は司令塔を失って弱体化しつつある機械生命体を一気に殲滅するという作戦だ。10Dは遊撃隊として、管轄地域に配属された作戦部隊を援護する役割を与えられた。
敵味方入り交じる戦いは、団体行動を苦手とする10Dに及ぶ危険など容易く想像できる。機体のロストはもちろん、一部隊を混乱に陥れ作戦に弊害をもたらした実例のある10Dを隊員たちは良く思わないだろう。
10Dを障害と見なした味方に討たれてしまうことも考えられる。戦いに復帰させないようにと四肢を破壊されどこかに放置されそうだ。
14Oの提案はそれを危惧してのことだった。
『えー?。参加しないなんて選択肢はないよ。討伐の指令なんて滅多にないんだから、今回で株を上げなきゃ!。』
資材集めばかりやらされていたこの10Dは己の立場を覆そうという腹で作戦への意気込みを見せた。
「ですが、あなたは……」
『また方向音痴だから止めとけって言うの?。司令官が言うなら従うけど、オペレーターなら私を補助してよね。その為のO型でしょ。』
「て、10D……あぁ…………」
10Dに無情な眼差しを向けられ、14Oは悲嘆した様子で胸を押さえた。
以前の彼女だ、と14Oは落胆と共に思い出した。いつ頃からか丸くなった10Dに慣れてしまっていた14Oにとっては、元に戻った10Dが酷く冷淡なものに思える。
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