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首無梅雨恋歌

第1章 豪雨の女


 屋敷につくと大浴場へ連れていき女が風呂に入っている間に冷たい茶や和菓子を用意した。もてなす気満々である。

「ここまで良くしてくれなくてもよろしいですのに……」

 女はバツの悪そうな顔をしたが、まぁまぁと丸め込んでしまう。

「どうしてこの雨の中傘もささずに泣いていたんだい?」
「……私は、雨女でございます。泣くと雨が降ります」
「泣くほど悲しいことが?」
「あ、いえ……私は悲しくなるとすぐに泣いてしまいます。どんなに小さな理由でも泣いてしまい大雨を降らせてしまうので、どこで働いても一月も続かず……行くところがなくて、悲しくてっ」

 心做しか外の雨音が強くなった。

「住み込みで働ける場所を探しているのですが、またクビになると考えたら……悲しくて」

 確実に雨が強くなっている。
 瓦や岩の石に当たる雨がビシビシと痛いほど音を立てている。

「じゃあうちで働いたらどうかな」
「えぇ!? ですが、また雨が」
「大丈夫、君の面倒は俺が見るから。もう絶対悲しい思いはさせないから」

 雨女は驚いた顔をしていた。雨も次第に弱まっていた。

「慣れないうちは色々あって雨が降るかもしれないけど、今は六月だから誰も怒らないよ」

 なにかあっても自分がフォローすればいい。とにかく今の首無はこの雨女を見捨てることが出来ずにいた。
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