第1章 豪雨の女
天気予報はお昼からの降水確率は80%と言われてたけど……雨っていうより豪雨だよなぁ。
容赦なく打ち付ける雨で傘が重い。
この豪雨のためか、外を歩いている人はぽつりぽつりといるだけで、普段より断然人が少ない。まぁこの首を隠すのにありがたいのであまり気にしないが。
轟々と流れが激しさを増す川を見つめている人がいた。この豪雨の中、傘もささずに立っていて頭にかけている手拭いも、来ている着物もぐっしょり濡れている。
あのままでは風邪をひいてしまう!
「君、大丈夫?」
傘の中に入れ、初めて気づいた。
女は泣いていたのだ。微かな嗚咽と啜り泣く声。女は自分の上に雨が降らないことに気づいたのかようやく首無に振り向いた。
髪が長く顔まではわからない。
「あの、」
「このままでは風邪をひいてしまうよ? 良かったらうちに寄って行かない?」
「……御迷惑になりますから」
「ここで君と別れてしまったら、気になって仕事が手につかなくなってしまうよ」
自分でもずるい言い方だと思う。でもここまで言わねば彼女は動いてくれないだろう。
「で、では少しだけ……」