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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第6章 信頼




「ん……。何だかんだで、今日も疲れた……。」

 教会に着くやいなや、私はベンチに身体を投げ出した。身体を休めるのには決して適さない、硬いベンチだけれど、疲労した私にはそんなこと関係なかった。空腹感というものはあまりなく、代わりに私の腹は緊張感で満たされているのかもしれない。
 それにしても、この崩れかけた教会も、何だか見慣れた景色になってきたように思う。落ち着くかと問われれば、それは違うのだけれど。
 アヴェンジャーは、使い捨ての容器に飲料水を注いで、渡してくれた。やっぱり、アヴェンジャーは、口では何と言っていようとも、根は優しいのだと思う。アヴェンジャー自身は、自らを“復讐鬼”、“復讐の化身”、“もはや人間ではない存在”、“怨念そのもの”などと称して憚(はばか)らないが、私には、そうとは思えない。いや、絶対に違うと思うのだ。
 そう言えば、この冬木に来てから、衝撃的なことが多すぎて、ついつい忘れていたけれど、ここに来る直前に、アヴェンジャーが私に声を掛けてくれなかったら、私はどうなっていたのだろう。 ―――――考えるだけで、ゾッとする。

「アヴェンジャー、ありがとう。」
 ふと、私の口からはそんな言葉が漏れていた。
「ンン? 何がだ?」
 アヴェンジャーは少し訝(いぶかし)げに、私に視線を投げかけた。
「うん、あのね。もしもあの時、カルデアの廊下で、アヴェンジャーが声を掛けてくれなかったら……って思うと、ね。」
 偶然とは、不思議なものだと思う。
「俺に同行を命じたのは、マスターたるお前だろうよ。」
「いや、でも、アヴェンジャーが声を掛けてくれなかったら、私は絶対に、アヴェンジャーを連れて行ってはいなかっただろうし。その偶然って、すごいな、って。だから……。」

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