第20章 第3部 Ⅵ ※R-18
「『人間の一生は彷徨い歩く影法師、哀れな役者に過ぎぬ。己の出番の時は、ふんぞり返って喚くだけ!(Lifes but a walking shadow,a poor player.That struts and frets his houw upon the stage!)』
我が宝具の題名は、『開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)』! 開演!」
シェイクスピアの宝具は、世界改変型の宝具だ。世界を閉塞させ、脚本を産み出し、取り込んだ対象を自作劇の登場人物に仕立て上げる。それだけならば、何も恐ろしいことは無い。しかし、厄介なのは、対象者の精神に働きかけ、「痛恨の過去」や「失墜した瞬間」など、その対象者が人生において最も打撃を受けた場面を再現し、その心を挫くところにある。
私がこの宝具に取り込まれたということは、狙いは私ということだろう。一体、どのような内容を見せられるのだろうか……。内容によっては、私だって耐えられないかもしれない。旅を通して、救えなかったものもあれば、後悔だって山ほどある。
『……っと。いけない。』
最初から弱腰では、打ち克てるものも、克てなくなってしまう。