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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第19章 第3部 Ⅴ



 闇からすっと現れたのはスーツのような洋装を纏った、壮年の男だった。この雰囲気、普通の人間ではない。この独特の存在感は、間違いなくサーヴァントだ。左手には紙束、右手に万年筆を持っていることから、文科系のキャスター……、だろうか? 身長は、それほど高くないが、身体つきは、わりとがっしりしている。大きく開けた額が、その聡明さを物語っている。顎髭は濃くて長く、高貴な印象さえも与える。しかし、その灰色の瞳は、狂気を湛えており、私に身震いを引き起こさせた。
 それにしても、様子がおかしい。およそ、正気の英霊とは思えないほど、致命的に何かを掛け違えているような、そんな気配。例えていうのならば、キャスター/ジル・ド・レェに近い何かを感じる。深淵を覗き込み、そして覗き返されたような、そんな瞳。灰色の瞳には、そんな闇が色濃く溶けだしては混じり合っている。

「ほう? 此度の舞台は、貴様の演出か? それにしては、役者も舞台も最悪だな。もう少し、品のある筋書きにしろ。性悪悪趣味作家ですら、もう少しマシな物を書く。」
「下らん物書きと混同するな。貴様は他人によって演じられるばかりだろう。他人の金で爵位を掠め取った成金伯爵め。」
「ほう? では、貴様は何者だ? 反転英霊の気配があるが……?」
「我が名か? 我が名は――――――、ノストラダムス。ミシェル・ノストラダムス!!」

「ノストラダムス――――?」
 どこかで聞いたことのある名前だ。何だっけ? 『ノストラダムスの大予言』だっけ? 何か、そんな本があるとか、どこかで聞いたことがあるような、或いは無いような……。

「フランス、ルネサンス期の医師であり、占星術師、詩人だな。様々な著書があり、現在に至っても、奴の著書を巡って様々な論争が展開されている。まぁ、そんな事はどうだっていい。貴様は、一体何が目的だ?」

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