第18章 第3部 Ⅳ ※R-18
目が覚めた。
「……。」
意識はまだぼんやりとしている。
柔らかな朝の陽ざしが、襖を通って部屋へと差し込んでいる。上掛けの布団を持ち上げ、上半身を起こす。寝巻用の薄い和服は、この世界に来てから眠るのに使っているもので、少しずつ私の肌に馴染みつつある。それは全然、嬉しいことではないけれど。
腕と下半身に力を入れて、布団から出ようとしたところで、下半身に変な感覚。
「……っ?」
別に、痛みというほどでもないが、違和感だけはある、強いていうならば、局所的に疲労しているという感覚に近いだろうか?
「あぁ、午前中は動かん方が良い。朝食は、此処へ運び込まれる手筈となっている。」
背後から急に声が聞こえて、ビックリした。
振り返ると、昨日まで着ていたものとは細部こそ異なるが、同じようなデザインの和服を着こんでいるアヴェンジャーが目に入った。和服は新品のようで、汚れひとつ見当たらない。
「お、おはよう……。」
「痛みは無いか? マスターよ。」
そう言いながら、アヴェンジャーは布団の近くに屈んでくれた。
い、痛み? 痛み……、痛み……。そこまで考えて、寝惚けていた意識が完全に覚醒した。
「ぅ、ぁぁぁあああああああああ―――――!!」
アヴェンジャーの顔が、心臓に悪い!!
「……。」
アヴェンジャーは、特に表情の無い顔で、私の慌てぶりをじっと見ている。でも、私はそんなに大人じゃない! だって……、だって私は……。昨日の夜、アヴェンジャーと、その、魔力を……、きょ、供給するために、その、あ、せ、せっく、せっくすを、して、その、あ、ぁぁぁぁぁぁ―――――!!
恥ずかしさが、一気に込み上げてくる。
「―――――少し、席を外すか?」
「ぃ、いい……です。あ、おはよう、ございます……。」
「2度目だぞ。」
言いながら、アヴェンジャーは湯呑に入ったお茶を手渡してくれた。これでも飲んで落ち着けという意味だろう。私は、有り難く頂戴することにした。お茶は、熱すぎずぬるくもなく、良い温度だった。そう言えば、カルデアで、彼が時々コーヒーを淹れてくれたことを思い出す。あのコーヒーも、私を随分と落ち着かせてくれる味だった。