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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第17章 第3部 Ⅲ ※R-18



***


 アヴェンジャーは、和室の畳の上に、力なく座り込んだ。左腕は、肩からぶらりと垂れ下がっているだけで、その負傷の程度がうかがえる。私は、傷ついてボロボロのアヴェンジャーを、何とか布団の上へと寝かせた。

「アヴェンジャー……。」
 明らかに、魔力不足だ。いくら何でも分かる。このままだと、アヴェンジャーは消滅してしまう。
「ぅ、ぐ……、マスター……。」
 私に向ける瞳はどこか虚ろで、焦点が定まっていない。その姿は、痛々しいほどだった。私は、せめてもの応急処置になればと、もう一度アヴェンジャーへと唇を重ねる。色気も何もない、ただ唇を重ねるだけの行為。それでも、これで、少しは魔力の譲渡ができていれば良いのだけれど……。

「ハァ……、ハァ……。ぁ、ぅ……。」
 しかし、アヴェンジャーの様子は、何も改善しない。私の中で、焦りが広がる。キス以外に、魔力を譲渡できる方法は無いだろうか。私は、自身の右手に宿る刻印へと目をやった。これならば、サーヴァントに対して一気に魔力が供給できる。しかし、残る令呪はあと2画。これからどれほどの戦闘が待ち受けているかも分からないこの状況で、そう易々と追加で令呪を切ることは、あまりにも危険ではないだろうか? そう思い、踏みとどまる。そうなれば、残る魔力供給手段は限られてくる。

 少し怖いけれど、コレしかない。

 私は、部屋に備え付けてあった果物用ナイフを取り出して、刃先を手首に宛がった。
「―――――っ……。」

 血による魔力供給。魔術師の血液中には、魔力が含まれている。ヴラド三世や、ゴルゴーンの姉妹などが好む、魔力の摂取方法。吸血の逸話など全く無いアヴェンジャーが、この方法を好むかどうかは不明だが、好き嫌いを言っている場合ではないだろう。私が倒れない程度に、血を飲んでもらえれば、少なくとも今の危険な状態からは脱することができる筈。尤も、それだけで魔力が足りるかは分からないけれど……。
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